2005-01-01から1年間の記事一覧
昔々、レコードを買うと、その内袋なんかに〝このレコードは音を大きくして聴いてください〟みたいなことがよく書いてあったものだ。音が大きいということは、ロック・ミュージックにとってのひとつのアイデンティティーだった。 ナンバーガールの音楽を聴く…
恋に落ちたとき、人は奇妙は行動をとるものである。その最たるものは、音楽のアンソロジーを作ることではないか。かくいうわたしも、貧しい恋愛経験に正比例してではあるが、好きな女の子のためにせっせとカセットテープのアンソロジーを作ったことがある。…
人生もとうに半ばを過ぎ、恋愛などというものにすっかり無縁の身となってしまったわたしだが、色恋沙汰への興味だけはいまだ尽きない。しばしば人生は謎に満ちたものだと思うのだが、その最大のものは恋愛にまつわるものではないか。恋愛さえなければ、人の…
サイコロジカル・スリラーは、浸透と変容の時代を迎えている。「羊たちの沈黙」をコアとしたブームはすでに過去のものとなり、次世代の作家や映像作家たちが新たに活躍の場を広げつつある。かつて動機のない殺人は、生真面目なミステリ・ファンのやり玉にあげ…
情けない。仕事にかまけて、前売りで買った平日のマチネをすっとばしてしまった。しかし、今回を見逃すとこの劇団の次の公演は、来年までない。こうなったら、当日券しかない!、というわけで、土曜日のマチネ、風がヒューヒュー吹き込む本多劇場の入り口階…
サイコ・スリラーの時代は終わった、という見方は今や一般的なものかもしれない。しかし、それは間違いである。異常心理を扱った小説や映画がもてはやされた一種のブームのような状態は、確かにすでに終焉を迎えた。しかし、かつてのブームを滋養としたサイ…
作家は、よく化けると言われる。そういう瞬間に立ち会うことが、読者にとっては冥利だとも言う。池井戸潤という作家にとって、そういう節目は『BT‘63』(2003年6月、朝日新聞社刊)という作品ではなかったかと思っている。98年に「果つる底なき」…
いや、もう恋は始まっているのかもしれない。というのは、ゆらゆら帝国というバンドに対する思いである。ゆらゆら帝国というバンド名を初めて耳にしたのは、もうずいぶんと昔だけれど、彼らの音を正面から聴いたのは、神保町のディスクユニオンに並んでいる…
プログレ・ファンを長く続けているせいで、プログレ史の生き証人のような気分になることがある。というのも、去年の秋、アゾートがデビューから24年目にファーストアルバム〝THE AWKWARD AGE'S END〟をリリースした際、レコ発ライブをやったのだけれど、そ…
ネオGSな人々の口にのぼるフェイバリット・アーティスト名を頼りに、昨年になってようやくGO!GO!7188に辿り着いた身としては、『竜舌蘭』のリリース、初の武道館コンサートと、テンションの高いまま俄かファンの日々を送ってきたが、今年になってSHIBUYA-A…
〝ザ・ポケット〟は、中野の住宅街の中にある。劇場経営者は、近隣対策とかいろいろと大変だろうけれど、芝居ファンだったら、こういう小屋が近所にあるのは、羨ましいと思うに違いない。JR中野駅から徒歩5分で、電柱なんかの道案内が親切で、入り組んだ…
GO!GO!7188におけるリーダーシップについては、浜田亜紀子の『キラリ』のところで勝手な憶測を書いたけれど、ライブを観たことのない音楽ファンは、単純に彼らの曲をほとんど一人で書き、リードボーカルとギターを担当するゆうこと中島優美こそが、バンドを…
舞浜のディズニーランドに併設されたイクスピアリに、ジャズ系のライブハウスがオープンしたというニュースが伝わってきたは、昨年の11月のことだったか。なかなか足を運ぶ機会がなかったのだけれど、ブルーノート・レーベル史上最年少リーダー録音記録を…
タイトルの「スペインの虜」とは、古くからある詐欺の手口を指す言葉である。すなわち、スペインからの亡命貴族を名乗る男が、こう持ち掛ける。母国で美貌の妹が囚われの身となっている。ついては、妹を救出するために、金銭的に援助してほしい、と。貴族は、…
去年の話題作『夜のピクニック』は、いわば恩田陸のもうひとつの顔だった、と言ってもいいだろう。田舎、高校生、親友などのキーワードで括られるノスタルジーと暖かさが心にしみる物語で、先の直木賞の候補にあがらなかったのは、本当に不思議でならない。 …
ホラー・ムービーのおたくだった時代がある。その頃は、年間ベストテンを選べるほど、ホラー映画を観てました。その中で、ひときわ強烈な印象が残っているのが、この映画です。フェアプレイかどうかはともかく、最後に明かされるミッシングリンクの種明かし…
日本公演のツアーは4日間、そのうち東京で行う2デイズのうちの初日である。会場の渋谷クアトロは、決して狭いハコではないのだけれど、開演の19時にはスタンディングの観客でかなり混み合っている。そうか、レイチェル・ヤマガタってこんなに人気がある…
わたし自身は目を通していないのだけれど、先日、雑誌のAERAが「思いっきりミステリー映画」という特集を組んだ際に、この作品がランクインしたというのを聞いて気になり、チェックしました。(おまけに、キネ旬の2004年海外映画の第2位だ!)韓国ドラマ…
4thアルバムの『竜舌蘭』のプロモーションを兼ねた〝ごんぶと〟ツアーも、この日のSHIBUYA-AXがファイナルとなる。昨年の武道館公演の余韻さめやらぬままの追加公演である。 キャパシティーの点からSHIBUYA-AXは、今の彼らの舞台としてはちょうどいいくらい…
ジャンル分けが不能の小説というのがある。ミステリ・ファンの中には、ジャンル間の見えない境界線を気にする人が比較的多いように思うのだけれど、わたしは気にしない。というか、むしろそういう小説の方が好きだ。予測不能の面白さもあるし、こちらの経験…
ジャック・フィニィに「五人対賭博場」というカジノを狙ったケイパー(強奪)小説がある。五人の学生たちがカジノを襲撃する顛末を描いたこの小説は、小味ながらよく出来ており、1954年の原作を、のちにハミルトンの〝サイレンサー部隊〟シリーズの映画化に…
夢の遊眠社の定番演目のひとつ『走れメルス』である。野田地図(NODA・MAP)を主宰するようになってからは、どうも波長が合わなくなって、野田秀樹の芝居を敬遠しているわたしだが、ちょっと懐かしいものを感じて、足を運ぶことにした。この演目は、夢の遊眠…
はてさて、出来の悪い続編である。映画のデータベースallcinemaを見ると、オリジナル・ビデオとなっているので、こちらのパート2の方は本国でも劇場公開はされていないのかもしれない。まるで前作をなぞるように沢沼地から始まるイントロ、ハイスクールの講…
フロリダを舞台にしたミステリは、かなりの確率で面白い。というのは、わたしの中での勝手なジンクスなのだけれど、あながち的外れともいえないのは、チャールズ・ウィルフォードやカール・ハイアセンらの饒舌で豊穣な物語を生みだす土地柄のようなものがそ…
ぼくの中では、ムーンライダーズというバンドは、いうなれば時代と添い寝してきたアーティストという印象が非常に強い。デビューからそろそろ30年が経とうとしているが、彼らは常にその時代性を感じさせるアーティストとして存在してきた。つまりは流行を…
3部作における2作目の再演である。なんでも、完結編の上演を来年に控えての今回の再演になったらしい。わたしは、最初の『BIG BIZ』(2001年、2002年)も、今回の『BIGGER BIZ』(2003年)の初演も不幸にして観ていない。(今回だって、動機は、最近贔屓の松…
ニューリリースのインフォを見かけてアマゾンにオーダーしたまではよかったけど、Sad cafe のベストアルバムと一緒に申し込んだのが大失敗。11月下旬のことだが、クリスマスまで1か月もあるから、間に合うだろうと高を括っていたのだが…。 Sad cafeがなか…
ロベール・トマの戯曲『8人の女たち』を映画化したことで、ミステリ・ファンならマークしているに違いないフランソワ・オゾンだが、この新作の主人公はなんとミステリ作家だ。売れっ子の女性作家サラが新作を書き下ろすために、愛人である編集者の別荘を訪…
嵐に閉ざされ、外の世界とは隔絶されることになった1軒のモーテル。そこで連続殺人の火蓋が切って落とされる。典型的なフーダニットのミステリ劇といっていいだろう。監督は「17歳のカルテ」、「ニューヨークの恋人」のジェームズ・マンゴールドである。 …
一部NHKの大河ドラマと並行しての作業だったのだろうか、「新撰組」の幕切れとダブりながらスタートした三谷幸喜の新作である。会場は、東京サンシャインボーイズを休業して以来、三谷芝居の常小屋となっているパルコ劇場で、『出口なし!』、『君となら』…