(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

松永貴志@舞浜Club IKSPIARI

舞浜のディズニーランドに併設されたイクスピアリに、ジャズ系のライブハウスがオープンしたというニュースが伝わってきたは、昨年の11月のことだったか。なかなか足を運ぶ機会がなかったのだけれど、ブルーノート・レーベル史上最年少リーダー録音記録を作ったというピアニストが来るという話があって、それではということで、会場のClub IKSPIARIに出かけてみることにした。
Club IKSPIARIは、イクスピアリの4F、飲食店街の一番奥にある。想像以上にゆったりしたスペースで、青山のブルーノート東京を思わせるつくりになっている。スクエアなテーブルの配置も似ているが、キャパシティははるかに少なく、全体で100名も入れば全部席が埋まってしまう。サービスの質やメニューの値段を見ると、これで果たして採算がとれるのかという余計な心配をしたりもする。
さて、ライブのスタートは7時。ステージに登場した松永貴志は、若いという予備知識(19歳)はあったにも拘わらず、その幼い風貌にやや驚く。服装や履いている靴、髪型や無邪気な表情まで、そのあたりにいる純朴な高校生と、まったく見分けがつかない。
しかし、彼の指が鍵盤におろされると、ステージ上の緊張感が一瞬にしてひきしまるのが判る。第一部の最初の曲はオリジナルだそうだが、そのあとに演奏したスタンダード級の曲とまったく遜色ない出来映えだ。ジャズ・ピアニストの演奏を形容する語彙をもたないわたしだが、彼の演奏は奔放さとスケールの大きさは、並みのものではないことが判る。スピーディな展開はもとより、場面としては少ないが年齢をまったく感じさせないムードのある演奏にも、大人の雰囲気が漂っている。
すでに成熟した技量を見せ付けられた思いだが、曲間のMCなどをきくと、バックパッカーとしてヨーロッパを旅したエピソードや、関西という出身地をのぞかせるベタがギャグなど、年齢相応なところも垣間見せ、アンバランスな魅力を生んでいる。その彼をサポートするベースの佐藤“ハチ”恭彦とドラムスの高橋徹のテクニックも確かなもので、1部と2部を合わせて正味2時間の演奏は乗りに乗ったものだった。テンションの高い演奏を堪能して、心地よい熱気を孕んだ会場を出ると、頬をなでる冬の海風の冷たさが心地よかった。