(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

Rachael yamagata@渋谷CLUB QUATTRO

日本公演のツアーは4日間、そのうち東京で行う2デイズのうちの初日である。会場の渋谷クアトロは、決して狭いハコではないのだけれど、開演の19時にはスタンディングの観客でかなり混み合っている。そうか、レイチェル・ヤマガタってこんなに人気があるのか。
レイチェル・ヤマガタは昨年、デビュー・アルバムをリリースしたばかりの日系二世のシンガー・ソングライターで、そのファーストアルバム『ハプンスタンス』は輸入盤屋でもよく見かけたし、国内盤もリリースされた。あちこちで見かけた音楽雑誌のディスクレビューも、概ね好意的であったと記憶している。わたくし的には、やや守備範囲の外だが、偶然にもアルバムを聴く機会があって、フィオナ・アップルアラニス・モリセットらに通じる女性歌手としては悪くなく、気に入った曲もあった。〝ミュージック・マガジン〟のインタビューなどを読むと、彼女の恋愛話なんかも出てきて、なるほど、情念系だなと思わせたりもする。
さて、19時を少し過ぎて、ライブはスタート。まず驚いたのは、てっきりシンプルなセットだと思っていたのだけれど、バックバンドが5人もいたことだ。ギター、ベース、ドラムスに加えて、バイオリンとチェロもはいっている。ベーシストは曲によっては生ギターへの持ち替えも行っていた。
本人は、ややしわがれたハスキーボイスだが、感情をたっぷりとこめながら、デビュー・アルバムからとおぼしき、聴き覚えのある曲を次々に披露していく。曲の系統はふたつあって、陰影に富んだ曲調のものと、アメリカン・ロック調の乗りのいいナンバーで、それを交互に折り込まぜた構成になっている。曲に合わせて、バックバンドの演奏も、バイオリンのチェロのセットで室内楽風に演奏したり、ギターやドラムスが前面に出てダイナミックに展開したり。本人ヤマガタのやや控えめながら、歌を聴かせるという姿勢を前面に押し出したステージングも、初々しさの中に、すでに存在感がある。
観客の反応も悪くなく、ヤマガタの呼びかけにあちこちで応えるなど、会場内の雰囲気も暖かかった。アンコール2曲を含んで、全体で90分弱程度のステージだったが、彼女のボーカルと質の高い演奏を堪能した。わたしとしては、大好きな〝I want you〟をやってくれなかったのが、ちょっと心残りではあったが。