(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い」に感じる恋の予感

いや、もう恋は始まっているのかもしれない。というのは、ゆらゆら帝国というバンドに対する思いである。ゆらゆら帝国というバンド名を初めて耳にしたのは、もうずいぶんと昔だけれど、彼らの音を正面から聴いたのは、神保町のディスクユニオンに並んでいるのを衝動買いした2001年のシングル「ラメのパンタロン」が最初だった。
70年代色が強烈なジャケットから想像される音が耳に飛び込んできたのは、ほぼ予想どおりだったけれども、ややアナクロとも思える骨の太いロックサウンドには、なんだか妙に惹かれるものがあった。その時から、ゆらゆら帝国は気になるバンドのひとつとなった。しかし、そんなわたしの淡い恋心に火をつけたのは、2003年にリリースされたこのアルバム、「な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い」である。
1000円というそのお買い得価格にも驚いたが、その内容にはさらにぶっ飛んだ。内容は、先行する2枚のアルバム「ゆらゆら帝国のしびれ」と「ゆらゆら帝国のめまい」のツアーの模様を収録したライブ・アルバムなのだが、最初、ノイズ系か聴き違えるかもようなノイジーなサウンドが大音響で飛び出してきて、いったい何事かと正直戸惑った。
しかし、音の輪郭すらも掴めないその混沌としたサウンドから、やがて曲のようなものが浮かび上がってくる。おぼろげな音像から、透かして見えてくる旋律に耳を傾けると、やけに心馴染む感じがある。この瞬間、わたしはゆらゆら帝国というバンドに心を絡め取られた気がした。
大胆不敵なエフェクト処理(これが強烈)が、非常に不思議な効果を上げている。配置されたフォーキーな曲との対比が面白い。ノイズ、グランジなど、音楽には大音響や歪んだ音が生む音楽の魅力というものが存在するけれど、ゆらゆら帝国が放つプリミティブで原初な音楽は、遥か昔、日本ロック界の黎明期を彷彿とさせるもののように思える。
機会があればぜひライブを観たいが、とりあえず買った2枚組のベスト・アルバム「1998−2004」では、やけに人懐こい彼らと再会した。ノイジーな虚飾と、無邪気なポップさの間に漂う彼らの正体は、どこにあるのだろう。曖昧な恋心は、深まるばかりである。

(収録曲)
1) イントロダクション 〜ハラペコのガキの歌 2)誰だっけ? 3) 侵入 4)無い!!5) バンドをやってる友達 6) 恋がしたい 7)夜行性の生き物3匹 8)貫通 9) ボタンが1つ 10)星になれた

ちなみに、ゆらゆら帝国は、1989年にリーダーである坂本慎太郎が結成したバンドで、1992年にメンバーチェンジを経て現在の構成となった。メンバーは。坂本慎太郎(ギター.ボーカル)、亀川千代(ベース)、柴田一郎(ドラムス)の3人。
ディスコグラフィーは、下記のとおり。おそらくは不完全だけど、おいおい完全にしていきます。

(シングル)
発光体(1998)
ズックにロック(1999)
ゆらゆら帝国で考え中(2000)
ラメのパンタロン(2001)

(CD)
アーユーラ(1996)
ライブ(1997)
3×3×3(1998)
ミーのカー(1999)
太陽の白い粉(1999)
ゆらゆら帝国3(2001)
ゆらゆら帝国のめまい(2003)
ゆらゆら帝国のしびれ(2003)
な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い(2003)
1998−2004(2004)

な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い

な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い