(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

オーシャンと11人の仲間 (1960)

ジャック・フィニィに「五人対賭博場」というカジノを狙ったケイパー(強奪)小説がある。五人の学生たちがカジノを襲撃する顛末を描いたこの小説は、小味ながらよく出来ており、1954年の原作を、のちにハミルトンの〝サイレンサー部隊〟シリーズの映画化にも携わったフィル・カールソン監督で映画化されている筈なのだが、あちこちの映画データベースを探しても、ぜんぜん見つからない。一方、こちらの『オーシャンと11人の仲間』(映画公開時は〝十一人〟)は、同じケイパーものでも、最近になってジョージ・クルーニー主演で「オーシャンズ11」としてリメイクされ、ヒット。続編の「オーシャンズ12」も製作されるという持て囃されぶりである。
クリスマスを間近に控え、エースボス(エイキム・タミロフ)は大がかりなカジノ襲撃を企てていた。二次大戦の空挺部隊軍曹のオーシャン(フランク・シナトラ)をリーダーに、かつての仲間を呼び寄せ、プランは具体化していく。音楽の道を志すハーモン(ディーン・マーティン)、資産家の息子フォスター(ピーター・ローフォード)、元オートレース選手のステファンズ(リチャード・ベネディクト)をはじめとして、元プロ野球選手(サミー・デヴィス・ジュニア)、電気の専門家(リチャード・コンテ)、元サーカス座員(ヘンリー・シルヴァ)、等など、総勢11人がそれぞれの思惑で大金をせしめる計画に乗った。
強奪計画は、大晦日と元旦の境い目、午前0時に5つのカジノを停電させ、現金を奪うというものだった。蛍の光が流れる中、計画どおり送電線を切り、見事に計画は成功した。ところが、オーシャンの計画を嗅ぎつけたサントス(セザール・ロメロ)は、賭博場の経営者たちとオーシャンらの間に割り込み、金を半分せしめようと交渉に現れた。計画中に急死した仲間の棺に隠し、現金をラスベガスから運び出そうと画策するが。
古き良きハリウッドの香りを満載したギャング映画である。芸達者なシナトラ一家のオールスターで、ゆったりと楽しめる映画に仕上がっているが、ややプロットは単純。ミステリ映画としての面白さを期待しすぎると、裏切られた思いがする。強奪ものとしてのサスペンスは、リメイクの「オーシャンズ11」に譲るかもしれない。
ジョージ・クレイトン・ジョンソンとジャック・C・ラッセルの原作(有名な作品かどうかは不明)をチャールズ・レデラーとハリー・ブラウンが共同で脚色し、「西部戦線異状なし」のルイス・マイルストーンが監督した。特別出演として若き日のシャーリー・マクレーンも顔を出している。[★★]

オーシャンと11人の仲間 特別版 [DVD]

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(以下ネタばれ)
オーシャンの思惑を知らない未亡人は、夫の遺体を引取り、葬儀屋のすすめで当地で火葬にすることにしてしまった。かくして、現金は死体とともに炎に焼かれてしまう。11人とサントスが悄然と火葬場に揃うシーンで物語は幕になる。