(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

演劇

サスペンデッズ第12回公演「GO HOME」

早船聡の戯曲は、人間関係の機微を濃やかに描くところにウェルメイドで確かな力を感じるけれど、そこに演劇的なセンスオブワンダーが加わったときに、とてつもない作品が生まれるのではないかという気がしている。例えば、星のホールにかけた『夜と森のミュ…

中野成樹+フランケンズ「ナカフラ演劇展」Aプログラム

あまたある翻訳劇の紹介と、誤意訳を掲げてのその解釈の可能性を広げてくれるという点で、ナカフラへの期待は尽きないが、見逃している作品も実は多い。というわけで、少しでも多くの演目を観たいと思っているファンにとって、ショーケース形式でのエントリ…

ppoi-っぽい-第1回本公演「星がるキミは雲の下」

コミックのタイトルではありません。そんな名前の新しい劇団による旗揚げ公演。ホテルの一室に出入りする人々をめぐって、思わせぶりな人間関係、思わせぶりなエピソードが繰り広げられていくが、結局、それらの断片は何も絵柄を浮かび上がらせないまま終わ…

青年団第66回公演「月の岬」

「海と日傘」で岸田賞をとっているマレビトの会の松田正隆の代表作にして、平田オリザとのコラボ作。初演は1997年。その後再演を経て、今回は12年ぶりの再々演だとか。わたしは初見である。 長崎方面の離れ島。姉と弟の二人暮らしの風景を軸に、島で暮らす人…

ナカゴー特別劇場「なしのつぶて」

同日に観た青年団をくさし、ナカゴーを褒めるのは、ちょっとオタクが過ぎるかなという気もするけど、やむをえないよなぁ、面白いんだから。先の浅草に続く特別劇場だが、ナカゴーなら何を見せられても面白い状態、の今のわたしである。 自宅の居間で、カップ…

直子あんりタイタイ「乙女ごころ三人姉妹」

芸達者、パワフル、天然。気になる若手女優三人によるユニットの最初の一歩。とくれば、スルーするのはちょっともったいない。出し物が、もともとは成瀬巳喜男の戦前の映画(1935年)という目のつけどころも嬉しい。(ちなみに、この映画、原作は川端康…

「南部高速道路」

「石蹴り遊び」で知られるアルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの短編小説に想を得ての舞台化らしい。原作は、作品集「悪魔の涎・追い求める男」(岩波文庫)に収録されている同題の小説で、今回の舞台化への経緯は、次のとおりだという。 3年ほど前に、フ…

ホチキス プロデュース公演「看板娘ホライゾン」

ロリータ男爵が観られなくても構わないけど(失礼)、丹野晶子の姿が舞台で見られなくなったのは寂しく思っていたわたし。というわけで、彼女をフィーチャーしてのホチキスの公演、当然期待に胸も膨らみます。 客が全く来ない饅頭屋「金蝶堂」。父が饅頭を焼…

劇団☆新感線2012年春興行 いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」

久々に劇場で聴くジューダス・プリーストの曲とそれに続く列車発車の合図音。シアタートップス進出以来のオールドファンだけど、チケット争奪戦とお高いチケットにちょっと嫌気がさして、遠のきがちだった劇団☆新感線。久しぶりにちょっと観てみたくなって。…

青☆組 vol.16「キツネの嫁入り」

劇団自身の言葉を借りるならば、「ほろ苦いペーソスと透明感を持ち味に、市井の人々の営みを描き続ける」のがこれまでの彼ら。そこから一歩、いや大きく踏み出してみせる吉田小夏@青☆組の新作だ。 むかしむかしの、未来の昔。ある村に、おじいさんと、おじ…

Cucumber+三鷹芸術文化センターpresents土田英生セレクション Vol.2「燕のいる駅」

2010年に田中美里をフィーチャーした「─初恋」以来となる〈土田英生セレクション〉の第二弾。MONOの公演以外で、土田作品を観ることができる貴重な企画だ。『燕のいる駅』は、もともとは外部に書き下ろした作品のようだが、1999年にMONOが上演。土田自身の演…

NYLON100℃ 38th session「百年の秘密」

テーマは、人と人を結びつける何か。男同士であれば友情とあっさり片付けられるであろうその何かに相当するものが、もちろん女同士にもあることは間違いない。映画では割とおなじみのテーマだし、芝居の世界でもきっと多数の先例があると思うが、そのちょっ…

リュカ.第11回公演「天使たち」

本当に久しぶりのリュカ.。調べてみたら、時間堂とジョイント公演した「 vocalise (ヴォカリーズ) 」(2006年11月)以来だった。ずいぶんと音沙汰なく、てっきりフェイドアウトしたんだろうと思ってたけど、そんな悪しき読みが外れてよかったな、とつくづ…

サンプル10「自慢の息子」

時に恋心もあっさり冷めてしまう。サンプルへの熱烈な思いが忽然と失せたのは、忘れもしない2009年秋の「あの人の世界」@東京芸術劇場小ホール1。2006年春の「地下室」@春風舎以来、たちが悪い風邪の微熱のように取り憑いていた何かが嘘のように消え、そ…

今年の3本を〈wonderland〉に寄稿しました

今年も小劇場演劇、ダンス、パフォーマンスのレビューマガジン〈wonderland〉の年間回顧企画『振り返る私の2011』に寄稿しました。2011年に観た芝居のフェイバリット3作+αを、わたしなりに挙げています。興味ある方、覗いてみてください。http://www.wonde…

柿喰う客「悩殺ハムレット」

柿喰う客が、女優だけでシェイクスピアを演じようというシリーズ企画〈女体シェイクスピア〉の第一弾。 様式というと語弊があるかもだが、自分たちなりのスタイルをある程度作り上げている彼らは、(ちょっと乱暴ないい方になるが)何をやっても大きなハズレ…

モダンスイマーズ「どん底スナイパー」

劇場の座席につくまで、いつもの通り蓬莱竜太作だと思っていた不覚。今回は、役者の古山憲太郎の作・演出デビュー作品との由。しかし、座席は満席。 小学生たちの「木の鳥」捕獲作戦と、刑務所におけるタイムマシーンの製造。ファンタスティックな物語を交錯さ…

チェリーブロッサムハイスクール「めろす」

らしくない公演だそうである。2008年にチェリーブロッサムハイスクールの公演を一度観ているのだが(「その夏、13月」)、話を作り過ぎているところにどうしても違和感があって、あまりいい印象はなかった。 しかし、「らしくない」を自称する今回の公演、わた…

劇団桃唄309「はじめてのにんげんがり」

先の震災に変更を余儀なくされた芝居は多いが、桃唄の新作もそのひとつのようだ。 脱サラで開店に漕ぎ着けたカフェ。そこに出入りするマスターとその兄弟、友人、ご近所、ふらりと訪れたお客さんたちが織り成していく年代記風の物語である。お店だけでなく、…

女王陛下「ビガールの理髪師」

好きです、女王陛下。とはいうものの、なかなかタイミングが合わなくて、3年ぶり2度目の観劇。この公演を最後に、大地輪子が抜けるという話を聞いたのは公演終了後のこと。 パリのピガール広場近辺。店主がいない理髪店に謎の来訪者がやってきたことから、…

青年団リンク 水素74%「謎の球体X」

田川啓介という名前に反応できなくても、劇団掘出者の出身ときけばピンと来る人もいるのでは。かくいうわたしがそうなのだが。現在は青年団の演出部に所属しているようで、水素74%としては今回がおそらくは旗揚げの公演。 現実世界と微妙にずれたパラレルワ…

ガレキの太鼓 のぞき見公演#2「秘密裏にどうぞ/ガールズパジャマパーティ2011編」

メニューは、『あやういカップル編』、『男女同窓会物語編』、『ガールズパジャマパーティ2011編』ののぞき見型3本と、巻き込まれ型1本の4種類。初体験のわたしは、とにもかくにも思いっきり邪な気持ちで『ガールズパジャマパーティ2011編』を覗きに出か…

MCR「女がつらいよ」

ここ数年、ほとんど何を観ても面白い状態のドリチョコ、MCR。もしかして櫻井智也って天才って思ったり、思わなかったり。小椋あずきを大々的にフューチャーしての新作。 女にとって難しいお年頃の四十歳代、あずきちゃんは怪しい稼業の若いイケメンと熱愛中…

ポツドールvol.19「おしまいのとき」

『顔よ』から3年と余月。もうそんなに経つのか。ポツドール、久々の新作上演である。 事故でわが子を亡くした喪失感から立ち直ることのできない母親と、それをなすすべもなく見守るしかない父親。そんなふたりの心の隙間に、隣人や家電業者たちという第三者…

個人企画集団*ガマ発動期「ランディおじさん」

昨年3月にスズナリで上演された本作に惚れ込んだサンモールスタジオの佐山泰三(代表)の熱烈なひきで実現した再演。キャスティングは、前回から異同なし。わたしは、初見。 おんぼろバッティングセンターにたむろする怪しい人々。星野仙吉ことセンターの経…

表参道ベースメントシアター「HELLO!」

春の『in her twenties』にすっかり心を持っていかれてしまったこともあって、上野友之作・演出のクレジットに、ついつい引き寄せられました。悪くはなかったけど、いわゆるお仕事系の作品ではありましたね。ちなみに、会場の劇場主でもあるナベプロの企画も…

財団、江本純子vol.5「日本全国奇形鍋」

気づくと「劇団」から「財団」に変わってたエモジュンの非毛皮族の別ユニット。聞くと、その理由が、画数の関係ですと!しかも、財団って…。 春に福岡でやった『奇形鍋』の東京版らしいが、もちろんそっちは観ていない。ワークショップで集めた若い役者たち…

劇団破戒オー!!!池袋演劇祭参加し忘れた第13回公演「消失マテリアル」

以前同じ王子で観て(2008年の「刺青姫」)、大いに琴線に触れてきた破戒オー!!!。ほぼ三年ぶりだけど、いいですね、やっぱり。 予言が当たると評判のサイト、ハナウラ。それを作った女子高生のハナは、三人の男たちに誘拐された。しかし、一味の中に裏切り…

ロロvol.5.8「夏も」

誠に申し訳ないのだが、ロロとの相性は最悪と思しい。これまで共感できた作品は、たったひとつ。王子で観た「ボーイ・ミーツ・ガール」なのだが、しかしこれにはいたく胸をうたれた。大げさにいうなら、そうか、こういう作品を作れるなら、一生君たちを見守…

現代能楽集?「奇ッ怪其ノ弐」

一昨年のシアタートラムから世田谷パブリックシアターに舞台を移しての続編。イキウメの舞台をサイエンス・フィクションやホラーだとすると、こちらは怪談の世界だ。 百物語のようにオムニバス風にいくつかの物語が語られていき、最後に大きな物語が出現する…