(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

ミステリ映画

〝カオス〟トニー・ギグリオ監督(2005年・アメリカ)

ガイ・リッチーの〝ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ〟に出ていたジェイスン・ステイサム主演の犯罪映画と聞けば、気になって当然というところ。主人公は、休職中の刑事コナーズ(ジェイスン・ステイサム)である。人質をとって逃走した犯…

〝ビッグ・スウィンドル!〟(2004年・韓国)

観直してみて、二度楽しめる映画というのがある。チェ・ドンフン監督の〝ビッグ・スウィンドル!〟がそれである。ロードショーの時に観て、大胆不敵なサプライズ・エンディングに驚き、DVDで再見し、その巧妙な作りに改めて感心した。 冒頭は、強奪犯たちの…

〝パズラー〟

「ソウ」のイメージそのままのDVDパッケージ。さらには、この邦題。(原題は、〝FATEFUL TREASURE〟)これだけ商魂逞しく迫られて、手を出さないミステリ映画ファンはいないでしょう。監督のミヒャエル・カレンはドイツの人で、そもそもこの作品自体はTVムー…

〝マシニスト〟

「マシニスト」には、やけに印象的なシーンがある。やせ細った主人公が、冷蔵庫の前だったかキッチンでダンスを踊るくだりだ。ほんの一瞬なのだが、激しく痩せた体の不気味さと奇妙な動きが印象的で、なんとも忘れがたい。主演のクリスチャン・ベールの30kg…

〝メメント〟

記憶のメカニズムは、不思議であると同時に不可解でもある。クリストファー・ノーラン監督の「メメント」の主人公レナード(ガイ・ピアーズ)は、短期記憶に深刻な障害をもっている。妻を目の前で殺された時に負った精神的、肉体的な衝撃で、数分前の記憶を持続…

〝レイクサイド マーダーケース〟

原作は、東野圭吾の「レイクサイド」。それを映画化にあたって、「レイクサイド マーダーケース」とした製作サイドのセンスをまず称えたい。ミステリのタイトルでは定番ともいうべき殺人事件(マーダーケース)という響きには、安直さと裏腹の不思議な効果がある…

〝インソムニア〟

インソムニア=不眠症。都会からやってきた辣腕刑事は、白夜の町で眠ることができず、睡眠不足で七転八倒しながら、殺人事件の捜査にあたる。そんなユニークな映画を撮ったのは、「メメント」の凝った映像でミステリ・ファンからの認知度も高いクリストファ…

〝迷宮の女〟

かつてビル・S・バリンジャーというアメリカのミステリ作家がいて、一見無関係なふたつの物語を並行して語っていき、それをラストで鮮やかに交叉させるという独特の小説のスタイルを得意としていた。「歯と爪」や「煙で描いた肖像画」などがその代表作だが…

〝アンブレイカブル〟

出世作の次の作品というのは、とかくその真価を改めて問われることになりがちなものだが、「シックス・センス」で世界的にその名をあげたM・ナイト・シャルマン監督は、この『アンブレイカブル』でずいぶんと思い切った企画にチャレンジしたものだと感心する。…

〝死に花〟

原作は太田蘭三の小説。それを犬童一心が映画化。勝手にドナルド・E・ウェストレイクか天藤真あたりの痛快なクライム・コメディを期待したいところだけれど、それはいくらなんでもないものねだりというものか。ともあれ、DVDのパッケージに、クールに佇…

〝ヴィレッジ〟

この映画を観ていて、『世界がもし100人の村だったら』というベストセラー本のタイトルを思いだした。都会や文明から遠く離れ、わずかな人々が身を寄せ合い、自給自足で牧歌的な日々を送っている。舞台は、ペンシルバニアにある山間の村と思しい。冒頭、…

〝フォーガットン〟

昨今、これほど物議をかもした映画も珍しいのではないか。ジョゼフ・ルーベン監督の『フォーガットン』である。この映画、翻訳ミステリの専門誌にも、堂々たる1ページ広告が載っており、なんでも、「シックス・センス」以来、もっとも衝撃的なスリラーとの触…

〝約30の嘘〟

詐欺師たちの騙し合いの物語だと聞いて、コンゲームなどのミステリ映画を勝手に連想していた。監督は、大谷健太郎。TVなどでお馴染みの顔ぶれがキャストを固めるオールスターの俳優陣もあって、公開時はそれなりの話題を集めたと記憶している。 大阪から札…

ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ (1998)

極東の島国では、イギリスとアメリカをひと括りにして英米などと言ったりする。しかしながら、同じ英語圏でありながら、双方の文化はある意味非常に対照的である。濃い紅茶と薄いコーヒーほどの違いとでも言ったらいいだろうか、風土や気候、さらにはそこで…

〝オールド・ボーイ〟 (2004)

2004年のカンヌでグランプリという鳴り物も入った本作は、「殺人の追憶」と並んで、昨年公開された韓国映画の中では飛びぬけて評判のよかった作品といえるだろう。ミステリ・ファンにも強くアピールしたという点でも双璧。なんと原作は日本のコミックで、九十…

〝エンジェル・ダスト〟石井聰互監督(1994)

この「エンジェル・ダスト」が公開された1994年当時は、まだ「羊たちの沈黙」の余韻さめやらない時代であったように記憶している。サイコ・スリラーに熱狂していたファンのひとりとして、この映画の複雑な面白さに舌を巻いた記憶がある。その後、時代も変り…

〝箪笥〟(2003)

ホラー関連で「箪笥」というと、われわれオールド世代には半村良の短篇がまっさきに思い浮かぶが、もちろん別物。韓国の古典怪奇談「薔花紅蓮伝」がもとになっているそうだ。最近流行りの韓流にちょこっとだけ便乗しているわたしとしては、この映画もミステリ…

〝SAW ソウ〟(2004)

配給会社の試写、ロードショーと、ミステリ・ファンの間から高評が伝わってきていたにもかかわらず、どうも生理的にいやな予感がして、先延ばしにしていた『SAW』。しかし、DVDが発売され、いよいよ覚悟を決めて観ることにしました。しかしなぁ、足を…

〝H(エイチ)〟イ・ジョンヒョク監督(2003)

韓流、韓流って騒ぐ前に、わが邦画の文化ももっと大切にしろよな、と思わずぼやきたくもなる昨今の韓国ブームだが、〝AERA〟のミステリ映画特集がきっかけで『殺人の追憶』を見る機会を得て、韓国映画に対する認識を自分の中でちょいと改めた。ミステリ…

〝サスペクト・ゼロ〟(2004)

サイコロジカル・スリラーは、浸透と変容の時代を迎えている。「羊たちの沈黙」をコアとしたブームはすでに過去のものとなり、次世代の作家や映像作家たちが新たに活躍の場を広げつつある。かつて動機のない殺人は、生真面目なミステリ・ファンのやり玉にあげ…

〝テイキング・ライブス〟D・J・カルーソー監督(2004)

サイコ・スリラーの時代は終わった、という見方は今や一般的なものかもしれない。しかし、それは間違いである。異常心理を扱った小説や映画がもてはやされた一種のブームのような状態は、確かにすでに終焉を迎えた。しかし、かつてのブームを滋養としたサイ…

〝スパニッシュ・プリズナー〟(1997)

タイトルの「スペインの虜」とは、古くからある詐欺の手口を指す言葉である。すなわち、スペインからの亡命貴族を名乗る男が、こう持ち掛ける。母国で美貌の妹が囚われの身となっている。ついては、妹を救出するために、金銭的に援助してほしい、と。貴族は、…

〝誕生日はもう来ない〟(1981)

ホラー・ムービーのおたくだった時代がある。その頃は、年間ベストテンを選べるほど、ホラー映画を観てました。その中で、ひときわ強烈な印象が残っているのが、この映画です。フェアプレイかどうかはともかく、最後に明かされるミッシングリンクの種明かし…

殺人の追憶 (2003)

わたし自身は目を通していないのだけれど、先日、雑誌のAERAが「思いっきりミステリー映画」という特集を組んだ際に、この作品がランクインしたというのを聞いて気になり、チェックしました。(おまけに、キネ旬の2004年海外映画の第2位だ!)韓国ドラマ…

オーシャンと11人の仲間 (1960)

ジャック・フィニィに「五人対賭博場」というカジノを狙ったケイパー(強奪)小説がある。五人の学生たちがカジノを襲撃する顛末を描いたこの小説は、小味ながらよく出来ており、1954年の原作を、のちにハミルトンの〝サイレンサー部隊〟シリーズの映画化に…

ワイルドシングス2 (2003)

はてさて、出来の悪い続編である。映画のデータベースallcinemaを見ると、オリジナル・ビデオとなっているので、こちらのパート2の方は本国でも劇場公開はされていないのかもしれない。まるで前作をなぞるように沢沼地から始まるイントロ、ハイスクールの講…

ワイルドシングス (1998)

フロリダを舞台にしたミステリは、かなりの確率で面白い。というのは、わたしの中での勝手なジンクスなのだけれど、あながち的外れともいえないのは、チャールズ・ウィルフォードやカール・ハイアセンらの饒舌で豊穣な物語を生みだす土地柄のようなものがそ…

スイミング・プール (2004)

ロベール・トマの戯曲『8人の女たち』を映画化したことで、ミステリ・ファンならマークしているに違いないフランソワ・オゾンだが、この新作の主人公はなんとミステリ作家だ。売れっ子の女性作家サラが新作を書き下ろすために、愛人である編集者の別荘を訪…

〝アイデンティティー〟(2003)

嵐に閉ざされ、外の世界とは隔絶されることになった1軒のモーテル。そこで連続殺人の火蓋が切って落とされる。典型的なフーダニットのミステリ劇といっていいだろう。監督は「17歳のカルテ」、「ニューヨークの恋人」のジェームズ・マンゴールドである。 …

マッチスティック・メン(2003)

贔屓のニコラス・ケイジが主演だし、原作がヴィレッジブックスから出ている(原作者は『さらば、愛しき鉤爪』のエリック・ガルシア!)ってこともあって、ミステリ映画だろうと思い、公開時から気になっていた作品である。タイトルの〝マッチスティック・メ…