〝スパニッシュ・プリズナー〟(1997)
タイトルの「スペインの虜」とは、古くからある詐欺の手口を指す言葉である。すなわち、スペインからの亡命貴族を名乗る男が、こう持ち掛ける。母国で美貌の妹が囚われの身となっている。ついては、妹を救出するために、金銭的に援助してほしい、と。貴族は、妹を救出できた暁には、妹と母国においてきた財産を差し上げたいと約束する。ところが、当の本人はお金を受け取ったまま姿を消してしまう、というものだ。
主人公のジョー・ロス(ロバート・キャンベル)は、莫大な利益を生む可能性がある新事業〝プロセス〟のプレゼンテーションのために、カリブ諸島のエステフェ島を訪れている。しかし、彼には、社長のクライン(ベン・ギャザラ)が提案に対して報酬を支払ってくれるかどうかについて疑念を抱いている。そんな時、ひとりの企業家が彼に近づいてくる。ジミー・デル(スティ−ブ・マーチン)を名乗る男は、主人公に紙包みを托し、莫大な財産を持ち、有名なテニス・プレイヤーでもあるニューヨークに住む妹を紹介したいという。
帰国して、雇用主に対する不審をさらに募らせるジョーは、デルを信用して〝プロセス〟のデータを托する決心をするが、そんな彼のもとにFBIの捜査官マキューン(フェリシティ・ハフマン)が現れ、デルは有名な詐欺師だと告げた。デルを罠にかけるために、囮作戦に参加するジョーだったが、デルは現れなかったばかりか、〝プロセス〟の中身は白紙に摺り替えられていた。
万事窮したジョーは、彼に好意をもっている秘書のスーザン(レベッカ・ピジョン)の手助けで、デルが存在した証拠をエステフェ島へ探しにいく算段をするが、出国審査の途中で、島で預かった紙包みにの中身にデルの指紋がついていたのでは、と思い当たり引き返す。追っ手を巻きながら飛び乗ったフェリーボートで、彼はデルと意外な形で再会することに。
伏線のはり方にショットを費やすなど、丁寧な映像づくりを心がけた作品である。日本人というキーワードがあちこちに顔を出すなと思って観ていたら、最後のファリーボートの場面で、日本人が決定的な役割を果たす場面があって、ははーんと思った。あれは、なかなか愉快な趣向だった。
ただ、丁寧なつくりのわりには、仕掛けを明かし方があまりにあっけない。そこまでが結構小さなどんでん返しの連続なだけに、拍子抜けに近い思いが残る。騙されるカタルシスが感じられないのだ。そのあたりが、ちょっともったいない感じがした。監督・脚本はアメリカの劇作家でもあるデイヴィッド・マメット。[★★]
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〝プロセス〟を盗もうとしていたのは、社長のクラインだった。彼はデルを使って、ジョーから〝プロセス〟を盗みとろうとしていた。秘書のスーザンもそれに加担していた。FBIは、詐欺師を逮捕するために、ジョーには秘密で囮捜査を行っていた。最後に、デルに殺されそうになったジョーは、日本人観光客を装った捜査員に窮地を救われる。