(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝誕生日はもう来ない〟(1981)

ホラー・ムービーのおたくだった時代がある。その頃は、年間ベストテンを選べるほど、ホラー映画を観てました。その中で、ひときわ強烈な印象が残っているのが、この映画です。フェアプレイかどうかはともかく、最後に明かされるミッシングリンクの種明かしに、当時のわたしは心から驚かされました。騙される快感とは、まさにこのこと。思えば「13日の金曜日」も最初の1本はフーダニットのミステリ映画でしたっけ。
良家の子女が通うクロフォード学院で、とりわけ優秀な生徒たちのグループ〝トップテン"。主人公のバージニア(メリッサ・スー・アンダーソン)も、そのメンバーのひとりだが、楽しげに学園生活を送る表向きの顔の裏には、暗い過去があった。4年前の誕生日に、彼女の目の前で母親が折からの雨で増水した川に飲み込まれ、溺死したのだ。記憶の一部は失われ、その事故以来、彼女は時折襲ってくる幻覚に悩まされていた。
そのメンバーのひとりバーナデット(L・ドナルドソン)が、車の後部座席に隠れていた何者かに殺される。それを皮切りに、〝トップテン〟のメンバーがひとり、またひとりと姿を消していく。一方、バージニアは、精神科の医師ファラディ博士(グレン・フォード)のカウンセリングを受け、次第に記憶が呼び覚まされていく。4年前の事故の原因は、彼女の誕生日会の日に母が起こした飲酒運転による事故が原因であった。そして、バージニアの18回目の誕生日がやってきた。たったひとりの彼女の家族である父親ハル(ローレンス・デーン)が、庭の離れで見たものは…。
紹介の仕方が難しい。わたしの書いたあらすじで、この映画の一番美味しいところが判ってしまったのではないか、ちょっと心配である。実は、(以下ネタばれ)をお読みいただくと判るように、この映画は二重のオチがあって、その最初のオチが実に巧妙で、観客の快感を誘うのである。それに較べ、二番目のオチはこじつけもいいとこ。むしろ、全体の印象をチープなものにしてしまっている。全体に物語の運びが不器用なのだけれど、それも幸いして(?)か、わたしは見事に騙されました。採点は、そのミッシングリンク・ネタへの偏愛をこめてあります。
監督は、『ナバロンの要塞』、『恐怖の岬』の名匠J・リー・トンプソンで、ほう、こんなもんまで撮ってるのか、とびっくり。(そういえば、〝猿の惑星〟シリーズの『征服』、『最後の猿の惑星』もこのひとでした)主演のメリッサ・スー・アンダーソンは、TVの『ゆかいなブレディ家』や『大草原の小さな家』でお馴染みの人。[★★★]

(以下ネタばれ)
庭の離れで父親が見た光景とは、失踪していた少年たちがミイラ化してテーブルを囲んでいるところだった。バージニアが4年前の怨みでその時に来てくれなかった友人たちを殺して集めていたのか、と思いきや、バージニアは、手にした刃物で父親の首を切り、被っていたマスクを自ら取った。その下にあったのは、友人のアン(トレイシー・ブレグマン)の顔だった。トップテンのメンバーであるアンは、実の父親の愛人がバージニアの母であり、バージニアが異母妹であることを知り、復讐していたのだ。その場にやって来た本物のバージニアは、自らを守るためにアンを殺すが、その凶器を手に茫然としているところを、駆けつけた警官に逮捕されてしまう。ああ。