(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

ポツドールvol.19「おしまいのとき」

『顔よ』から3年と余月。もうそんなに経つのか。ポツドール、久々の新作上演である。
事故でわが子を亡くした喪失感から立ち直ることのできない母親と、それをなすすべもなく見守るしかない父親。そんなふたりの心の隙間に、隣人や家電業者たちという第三者がずかずかと入り込んでいく。彼らとのかかわりを触媒に、夫婦の関係は揺らぎ、やがてゆっくりと崩壊に向っていく。
テーマの今日性は、時間の経過とともに色あせていく。一方どんな刺激にも、やがて慣れがやってくる。『愛の渦』の再演のときにも感じたことだが、ある種のリアリズムを追求するポツドールの芝居はやはりナマモノであって、腐りやすい。
この新作の生への絶望が性を希求するという主題はそれなりに新鮮であっても、表現手段が手慣れたものであるがゆえに、なぜか既視感をおぼえてしまうのだ。最初は驚かされた暴力や性的な描写の過激さや、舞台装置のユニークなところにも、やはり飽きは来てしまう。
ポツドールが行き詰っているとは思わないが、傍から見て足踏み感は否めないところ。こういうときは、原初的なオリジナリティをさらに追求するというのも手ではないか。さまざまな困難もあるのだろうか、海外の演劇祭のみで国内では一度しかやっていない『夢の城』の再演など、面白いと思うのだが。アイデンティティのさらなる深化を期待したいところだ。(150分)

■データ
9・8〜9・25 @ザ・スズナリ
作・演出/三浦大輔
出演/篠原友希子、米村亮太朗、古澤裕介、高木珠里、松浦祐也、松澤匠、、新田めぐみ