(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

劇団桃唄309「はじめてのにんげんがり」

先の震災に変更を余儀なくされた芝居は多いが、桃唄の新作もそのひとつのようだ。
脱サラで開店に漕ぎ着けたカフェ。そこに出入りするマスターとその兄弟、友人、ご近所、ふらりと訪れたお客さんたちが織り成していく年代記風の物語である。お店だけでなく、その町、はては世界全体の変貌が、やがて明らかになっていく。
いくつかの時系列がシャッフルされる形で描かれる。終盤に至って狂言廻しと思われたある人物の意外な正体(実は死神)が明らかになり、タイトルの「にんげんがり」の意味するところも明らかになるという仕掛け。
しかし、時代ごとの描き分けが、丁寧になされているにもかかわらず、成功しているとは思えなかった。壁面に映るシルエットが、その時代を説明するという方法をとりながらも、場面ごとのメリハリに欠けるため、やっと全体像をおぼろげに把握できたと思ったときには、もうお話はおしまいに近かった。
ひしひしと迫る終末観を独自の表現方法を用いて描いている点で、本作の目的はほぼ達成されているのかもしれないのだが。(120分)

■データ
9・7〜9・13 @中野テアトルBONBON
作・演出/長谷基弘
出演/吉原清司、佐藤達、國津篤志、楠木朝子、山西真帆、政井卓実、塙育大 (Defrosters)、力武修一 (劇団リケチカ)、畑雅之、五十嵐ミナ (office HATTA)