(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

財団、江本純子vol.5「日本全国奇形鍋」

気づくと「劇団」から「財団」に変わってたエモジュンの非毛皮族の別ユニット。聞くと、その理由が、画数の関係ですと!しかも、財団って…。
春に福岡でやった『奇形鍋』の東京版らしいが、もちろんそっちは観ていない。ワークショップで集めた若い役者たちを一挙舞台に上げての群像劇、いや、登場人物間の繋がりが希薄だから、群像劇のようなものといった方がいいか。
労働条件の良くない工場の一日が描かれ、どこにでもある一日といった意味では物語は存在しないも同然だが、正社員、派遣、パートが入り乱れてのありがちで、しかし素っ頓狂な人間模様が、希薄に(しかし、時に濃密に)描かれていく。
この劇団は、本流の毛皮族を異端とすると、わりと正面から演劇に取り組んでいると思って過去作を観てきた。しかし、本作ではルーツへ回帰するかのように、プリミティブで無秩序な作りになっている。
時間の経過とともに、節目節目で起きる小さな事件(人間関係の摩擦)が点描されていくが、その点が線に繋がらないところが、もどかしくもあるが、面白い。エチュードか、演出かは不明だが、その歪さで印象に残るエピソードも多い。
しかしなぁ、財団で過去にやってきたこれまでを振り返ると、もう少し丁寧に作ってもいいとは思う。これでは、あまりに雑だし、散漫な印象を持つ観客もいるだろう。下手に形を整えると、さまざまな可能性を削ぐリスクがあるのは分かるけど、江本純子だったら未知なるものをいい方向に持っていく力と経験を十分に持ってると思うのだが。(60分)
■データ
SPACE雑遊
9・1〜9・4
作・演出/江本純子
出演/亜矢乃、石澤彩美、内山樹里、遠藤隆太、大石綾子、小野正彦、川上ルイベ、北川義彦、熊谷美香、小沼早苗、佐藤祐香、澁谷佳世、高山のえみ、長 菜々美、中村倫子、橋本美和、藤井咲有里、藤崎ルキノ、星奈美、本間玲音、宮本敏和、山口明希子、山並洋貴、吉川麻美、吉武遥