(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

リュカ.第11回公演「天使たち」

本当に久しぶりのリュカ.。調べてみたら、時間堂とジョイント公演した「 vocalise (ヴォカリーズ) 」(2006年11月)以来だった。ずいぶんと音沙汰なく、てっきりフェイドアウトしたんだろうと思ってたけど、そんな悪しき読みが外れてよかったな、とつくづく思える出来映えといっていい。
サンドイッチに喩えるならば、パンにあたる物語として、作家の中田顕史郎と担当編集者の奥田ワレタの関係がある。そこに売れなくなった絵本作家(池田)やレーシング・ドライバー(小寺)、駆け出しのカメラマン(サキ)が織り成すドラマと、それを見守る守護天使たちの物語が挟まっている形だ。
天使の存在に気づくこともなく、人々は喜びもあれば悲しみもある営みを日々続ける。そういう意味で天使たちの愛情深いまなざしは一方通行だが、しかしなぜか天使の存在に気づいている人間がいる。そのあたりが、このお話のミソ。それ以外もなかなか巧妙なつくりで、人間と天使をめぐるさまざまなルールが、時間を追うごとに見えてくるあたりも上手いなぁと思う。
離婚の結果、愛する娘と会えなくなってしまった作家の中田は、編集者を通じて娘とコンタクトをとっている。そして、そのキューピッド役を買ってでてくれる奥田に、ひそかに恋心を抱いている。このふたりの関係や、小寺とサキの心のつながりを描き分けている脚本は実に繊細かつシャープ。こいけけいこの天使が、ある変身を遂げるシーンにも、生命の誕生にも似た不思議な感動をおぼえた。
観る者にそこはかとない勇気を与えてくれる会心の復活作だと思う。頼むから、次は5年半も待たせないでほしい。(マチネ、105分)

■データ
5・2〜6@王子小劇場
作・演出/渡邊 一功
出演/池田ヒロユキ、こいけけいこ、増戸香織、境宏子、倉田大輔、サキヒナタ、佐藤祐香、小寺悠介、中田顕史郎、奥田ワレタ (クロムモリブデン