(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

チェリーブロッサムハイスクール「めろす」

らしくない公演だそうである。2008年にチェリーブロッサムハイスクールの公演を一度観ているのだが(「その夏、13月」)、話を作り過ぎているところにどうしても違和感があって、あまりいい印象はなかった。
しかし、「らしくない」を自称する今回の公演、わたしが前に観たものとは舞台づくりの方法論をまったく違えた印象で、かなり驚かされた。物語の基軸は太宰治の小説。しかし、役者たちはひたすら動き、走る、そして舞台を飛び回る。汗をかき、呼吸を荒くする舞台上の熱気が、それぞれの役者の存在感を際立たせ、客席にビビッドに伝わってくる。
素晴らしいなと感じたのは、方法論におぼれることなく、物語性の面白さをきちんと伝えているところで、原作は借り物ではなく、物語がきちんと舞台上で主役になっているところだ。
今年観たベストアクトのひとつ。突然変異ではなく、劇団の流れを変える公演になってほしいと思う。(90分)

■データ
9・10〜9・14 @こまばアゴラ劇場 マチネ
作/荒川修寺 演出/柴田雄平
出演/柴田雄平、渡部ラム、野田政虎、荒川修寺、山咲広美、池上武蔵、もなみのり