(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

NYLON100℃ 38th session「百年の秘密」

テーマは、人と人を結びつける何か。男同士であれば友情とあっさり片付けられるであろうその何かに相当するものが、もちろん女同士にもあることは間違いない。映画では割とおなじみのテーマだし、芝居の世界でもきっと多数の先例があると思うが、そのちょっと複雑で、デリケートな何かを、あえて女の友情とは言わずに、シリアスかつシニカルに掘り下げてみせるナイロンの新作公演だ。
物語は複雑なので省略。いきなりラストシーンの話で恐縮だが、これが実に素晴らしい。わずか5分にも満たないが、それぞれに紆余曲折の人生を送ったふたりのヒロイン(犬山イヌコ峯村リエ)が無邪気だった少女時代へと遡っていく。この一場面は、物語の中に流れた歳月を一気に反芻し、集約してみせる名ラスト・シーンだと思う。
しかしその見事さゆえに、そのクライマックスへの布石としての物語が、いまひとつ物足りない。そもそも、ふたりのヒロインをめぐる愛憎のありかが曖昧だし、時間を行き来する思い切った展開にもスリルがない。現実ならともかく、戯曲としてはもっと工夫があってしかるべきじゃないか。掲げられたディープな主題から、名作『わが闇』の出来映えに迫る作品を期待したが、拙速かつ未成熟な戯曲に不満をおぼえた。残念だ。
しかし、さすがに役者たちは達者で、戯曲も場面、場面には面白さがある。中でも、先のラストシーンへと繋がっていく老いたふたりの再会のシーンは、犬山イヌコ峯村リエが見つめあう瞬間、思わず息を呑んだ。松永玲子にコンサバな役をあてるのも、現在の女優陣の充実があればこその余裕だろう。もちろん村岡希美も素晴らしく、女性陣の活躍が目立った舞台だった。その陰で(失礼)、男優では大倉孝二に、いつにない深みのようなものを感じた。(ソワレ、休憩15分を挟んで190分)

■データ
4・22〜6・3@下北沢本多劇場(東京公演)
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演/犬山イヌコ峯村リエみのすけ大倉孝二松永玲子村岡希美、長田奈麻、廣川三憲、安澤千草、藤田秀世、水野小論、猪俣三四郎、小園茉奈、木乃江祐希、伊与勢我無、萩原聖人、近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ)、田島ゆみか、山西惇