(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

ナカゴー特別劇場「なしのつぶて」

同日に観た青年団をくさし、ナカゴーを褒めるのは、ちょっとオタクが過ぎるかなという気もするけど、やむをえないよなぁ、面白いんだから。先の浅草に続く特別劇場だが、ナカゴーなら何を見せられても面白い状態、の今のわたしである。
自宅の居間で、カップラーメンを食べている女の子がいる。その姉が友人を伴って帰宅。あとでもうひとりの友人とディズニーランドに行く約束があるので、それまで家で時間を潰したいという。三人三様に気を遣ったりもしながら、ガールズトークに花を咲かせる三人。しかし、なぜか友人がテーブルにドリンクをこぼしてしまったことから、明らかに姉の様子がおかしくなる。そんな空気を敏感に読んだ友人は帰ろうとするが。
一点突破主義というのがいいのか。ナカゴーの芝居には、物語のどこかで、普段は日常を見えないバリアーで包み込んでいる常識の壁に、ドカンと風穴が空く瞬間がある。そこからの展開は、笑いと切なさに一抹の不条理が加わった感情の洪水が、怒涛のように押し寄せてくる。
本作でいえば、堰を切ったように姉の口からあふれ出てくる父親の思い出話だ。最初は目が点になり、やがてお腹の底から笑いが湧き上がってくるが、最後に残るのはリリカルな感動なのである。
もうひとつ、女子のハートの内側にわだかまるビビッドな感情のもつれを描かせたら、作・演出の鎌田順也って、もしたしたら天才? いったい頭の中をどうこねくりまわしたら、こんな展開が出てくるんだと、本当に不思議に気持ちになる。(褒めてます)
かくして、わたしのナカゴー中毒は、さらに悪化の道をたどるのであった。(ソワレ、50分)

■データ
6・9〜6・10@東中野RAFT
作・演出/鎌田順也
出演/池内志穗、鈴木潤子、花岡尚