(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

直子あんりタイタイ「乙女ごころ三人姉妹」

芸達者、パワフル、天然。気になる若手女優三人によるユニットの最初の一歩。とくれば、スルーするのはちょっともったいない。出し物が、もともとは成瀬巳喜男の戦前の映画(1935年)という目のつけどころも嬉しい。(ちなみに、この映画、原作は川端康成の「浅草の姉妹」で、昭和初期の浅草六区を舞台に、厳しい母親のもとで成長していく姉妹たちのそれぞれの生き方を描いているもののようだ)
さて、今流行りの廃校活用施設の教室だったスペースを使っての公演らしく、地下鉄四谷三丁目駅を降り、10分足らずの道のりをトコトコと歩いていくと、以前は小学校だったと思しき施設に到着する。校舎を地下に降り、階段の踊り場みたいな場所に、下足箱があるので、そこでスリッパに履き替えると、気分はもう授業参観日に足を運んだ父兄だ。
お芝居だが、そんなこちらの気分にぴったりの、学芸会乗りである。出演者のカラーを活かしながら、動と静の対比を打ち出しながら、原作のハイライト・シーンとおぼしき場面を、いいテンポで繋いでいく。
贔屓の役者が繰り出す得意技を眺めるのだから愉快なことは間違いない。ただ欲を言えば、こういう機会だからこそ、普段とは違ったチャレンジを試みてほしかった気もする。そういう意味で、騒がしさが前面に出た今回は、予定調和の域を出ない物足りなさが残った。浴衣姿の彼女たちが、成瀬の世界をそのままに再現するシリアスさとか、想像しただけで面白そうに思えるのだが。
というわけで、次も期待しておりますよ、お三方。(マチネ、70分)

■データ
6・2〜6・10@四ツ谷CCAAアートプラザ ランプ坂ギャラリー ランプ3
演出/倉本朋幸
出演/村上直子(ホチキス), 渡邊安理(演劇集団キャラメルボックス), 深谷由梨香(柿喰う客)