(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

Cucumber+三鷹芸術文化センターpresents土田英生セレクション Vol.2「燕のいる駅」

2010年に田中美里をフィーチャーした「─初恋」以来となる〈土田英生セレクション〉の第二弾。MONOの公演以外で、土田作品を観ることができる貴重な企画だ。『燕のいる駅』は、もともとは外部に書き下ろした作品のようだが、1999年にMONOが上演。土田自身の演出では今回が二度目となる。

春、燕が巣をつくる頃─。昔なつかしい日本の風景を模してつくられた「日本村四番」。そこにある駅も一昔前のローカル線の駅舎を思わせる。いつもと変わらない穏やかな時間。しかし遠くの空にはパンダの形をした雲。突然、人は消えた。理由は分からない。駅に残った人々は穏やかな景色の中でただただ待つ。これが世界の終わりなのか?見上げる空にはパンダ雲が不気味なうねりとなって、ゆっくりと広がっている......。(公式サイトより、句読点を加えて引用)

昨年三月の震災をふまえてリライトしているようだ。勇気も必要だったとは思うが、まさに今上演せずにいつ上演するのだ、という作品であることは間違いない。静かに背後から忍び寄る終末の予感に戦慄。ユーモラスに幕をあけた物語が、やがて悲劇の色合いを帯びていく展開は、いまも生々しい悲劇の記憶と重なり、観る者の胸を締めつける。
人間模様から、やがて終わりの時が近づいたことを悟った人々の思い思いの行動へと焦点を移動させていくあたりが巧みで、そのエピソードのひとつひとつが切なさとともに不思議な感動を与えてくれる。よくできたホンだと思う。
前回に続いて参加の千葉雅子をはじめ、全キャストが文句なしの好演を見せるが、なぜかその向こう側にMONOの役者たちがダブってみえる気がした。機会あれば、MONOによる再演も観てみたいものだと思う。
(ソワレ、110分)

■データ
5・18〜5・27@三鷹芸術文化センター星のホール
作・演出/土田英生
出演/酒井美紀内田滋千葉雅子土屋裕一(*pnish*)、尾方宣久(MONO)、中島ひろ子久ヶ沢徹