(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

マッチスティック・メン(2003)

贔屓のニコラス・ケイジが主演だし、原作がヴィレッジブックスから出ている(原作者は『さらば、愛しき鉤爪』のエリック・ガルシア!)ってこともあって、ミステリ映画だろうと思い、公開時から気になっていた作品である。タイトルの〝マッチスティック・メン〟は〝詐欺師たち〟の意。
詐欺の稼業で優雅な暮らしを送るロイ(ニコラス・ケイジ)の唯一の悩みは、並外れた潔癖症である。それを抑えるために、特別に処方された薬を服用する日々を送っている。しかし、ある朝、間違って薬を流しのディスポーザーに落としてしまったから大変。パニック状態に陥ったロイに、見習いの相棒フランク(サム・ロックウェル)は、知り合いの精神分析医(ブルース・アルトマン)を紹介する。薬を処方するための条件として、しぶしぶ問診に応じたロイは、生まれてこのかた一度も会っていない娘が存在する可能性に思い当たる。別れた妻の家のあたりをうろつくうちに、偶然にも出会った少女は、ロイの娘アンジェラ(アリソン・ローマン)を名乗った。母親との不仲を理由に、ロイの家にころがり、彼の生活に干渉するアンジェラ。新たなカモを料理しようと準備を進めていたロイだったが、やむなく仕事にアンジェラを巻き込むことに。
仕掛けは、物語の前半にだいたい想像がついてしまう。なるほどよく出来てはいるけれど、この手のドラマは底が割れてしまってはしょうがない。そういうわけでサプライズ・エンディングの衝撃はほとんどなかった。そもそも娘との心の交流をしんみりと描くあたりに隙があり、それがコンゲームの流れに微妙にズレが生じさせ、最後まであとをひく。潔癖症の詐欺師という設定は面白いし、丁寧な作りではあるのだが、それが実を結んでいない。
監督はリドリー・スコットだが、こういうハートウォーミングな内容から察するに、実質的には製作総指揮にあたったロバート・ゼメキスの作品だろう。リドリー・スコットは、異様な緊張感に満ちた作品世界を作り出す映像作家だったが、ここのところそういう才能がすっかり影を潜めたようだ。そういえば、面白くなる筈の『ブラック・ホーク・ダウン』も、期待したほどじゃなかったことを思い出した。なんとも寂しい限りである。[★★]

マッチスティック・メン 特別版 [DVD]

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