(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝SAW ソウ〟(2004)

配給会社の試写、ロードショーと、ミステリ・ファンの間から高評が伝わってきていたにもかかわらず、どうも生理的にいやな予感がして、先延ばしにしていた『SAW』。しかし、DVDが発売され、いよいよ覚悟を決めて観ることにしました。しかしなぁ、足を鎖で繋がれた男に、ノコギリだからなぁ、これはどう考えてもヤバいでしょう。
さて、物語の幕があがると、そこは薄汚いバスルームの中。対角線となる両隅にふたりの男が、それぞれ部屋の隅に鎖で繋がれている。その彼らのちょうど中間には、拳銃で頭を撃ちぬいて自殺したとおぼしき男の体が血だまりの中に横たわっている。男の一方、ゴードン(ケアリー・エルウェズ)は病院の医師で、犯人とおぼしき謎の男から、対角線上のアダム(リー・ワネル)を翌朝の6時までに殺せというメッセージを受け取る。アダムを殺せば命は助かる、と言う。しかし、それができなければ、彼ばかりでなく家族の命もないと脅しを受ける。
一方、ジグソウと綽名される殺人犯が、奇妙な連続殺人事件で世間を騒がせていた。これまでの被害者は、自殺癖のある男、放火魔、麻薬中毒の女たちで、それぞれの罪に従って残酷なシチュエーションに置かれ、被害者たちはそこから脱出するためにはとんでもない難題をつきつけられられた。ジグソウは「命を粗末にしている人間に、その大切さを教える」と嘯いていたが、唯一助かった麻薬中毒の女は、ジグソウに感謝していると語った。タップ刑事(ダニー・クローヴァー)は、ジグソウを追いつめたが、すんでのところで逃げられた経験がある。その時に相棒のシン刑事を殺された怨みから、警察を退職して、現在でも執念で彼を追っている。
ゴードン医師とアダムを閉じ込めたのもジグソウの仕業だったが、やがてゴードン医師は以前、ジグソウの事件で重要参考人として取調べを受けていたことが判る。さらに、ゴードン医師とアダムの関係も明らかになる。アダムは探偵で、何者かの依頼を受けて、ゴードンの浮気の調査をしていたのだ。しかし、ついにジグソウがルールとして定めた時間がやってくる。アダムを殺せなかったゴードンに最悪の運命が訪れるが。
うーむ、幕切れあたりでいやな予感は的中した。とはいえ、なるほど、面白い。ミステリ映画として、強烈なフーダニットがあるし、無理なシチュエーションもきちんと練られているように映る。不気味なサスペンスも、最後の最後まで持続するあたりは、監督のジェームズ・ワンの演出は本作でデビューとは思えないくらいに達者なものだ。
とりわけ、中盤のさりげない伏線が、ラストのサプライズ・エンディングで浮かび上がるところは、かなり衝撃。劇中で何度も繰り返される、犯人は最前列で見守っている、という台詞が、ここで見事に生きてくる。奇抜な設定に付与された説得力とともに、観客を欺く手腕に拍手を送りたい。[★★★★]

SAW ソウ DTSエディション [DVD]

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(以下ネタばれ)
犯人のジグソウは、ゴードンが勤める病院に入院中の脳性麻痺の患者ジョンだった。彼の脅しで、ゴードンとアダムをバスルームに閉じこめ、ゴードンの家族を軟禁した実行犯は、病院の清掃夫だった。家族の危機にパニック状態に陥ったゴードンは、ノコギリで自らの足を切断した後、わざと急所を外してアダムを撃ち、犯人の目を欺こうとする。しかし、時すでにタイムリミットの6時をまわり、ふたりの間に横たわる自殺死体と思われた男が、おもむろに立ち上がり、ゲームセットを告げる。自殺死体は、ジグソウその人だった。ジグソウは変装を剥ぎ取り、音をたてて扉を閉め、バスルームを出ていく。