(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「衛星都市へのサウダージ」ヨーロッパ企画第24回公演(星組)

さて、〈バック・トゥ2000〉シリーズの連続上演も、いよいよ佳境の3作目。なんでも、当時もっともうけた演目との噂がしきりに聞こえてくるこの作品。下北沢から新宿のシアタートップスに劇場を移し、先に雪組と砂組に分散していた役者たちが結集するということもあって、それではお手並み拝見といきたいところだが。
21世紀もおしまいにさしかかり、人類は新たなる世界を求めて、地球から彼方の惑星アルカディアへと飛び立つことになった。しかし、まずはその前段階として、アルカディアを囲む軌道上に衛星都市を築き、環境の整備を行わなければならない。選抜された入植者らを乗せて、スターライダー号はワープを繰り返しながら、目的地へと向かうが。
本広克行監督の映画版「サマータイムマシンブルース」でヨーロッパ企画に興味をもったわたしだけれども、なぜか公演に足を運ぶたびに首を傾げてきた。しかし、その理由がようやく判ったような気がする。というのも、わたしが彼らに求めていたものが、お門違いだったことにハタと気が付いたからだ。
なるほど、芝居の物語性で見せる劇団ではなく、役者個々のキャラクターが売り物なんですね、ヨーロッパ企画。物語は役者たちを動かす(喋らせる)ための容器に過ぎないわけで、青い鳥や超能力といった魅力的な素材を持ってきても、それを発展させていくことに作者はあまり関心がない。
それは、本作でも同じで、SFの物語というよりは、宇宙船の中で繰り広げられるコント集といった方がぴったりくる。これまでの積み重ねが、シチュエーション・コメディとしてお約束のパターンを作り出しているのだろう、観客の笑いをとる場面も多い。しかし、3作を連続で見せられたこともあって、その手馴れた作りにマンネリズムを感じたのも事実。
となると、昨年の「ブルーバーズ・ブリーダーズ」あたりが、劇団としての新機軸ということになるのだろうけれど、あれはメリハリがなくて、腹たつくらいにつまらなかったしなぁ。さて、過去のおさらいを終えた彼らは、次の一歩をどう踏み出すのだろうか。(130分)※東京公演は7月2日まで。(大阪は終了)

■データ
マチネ/新宿THEATER/TOPS
6・20〜7・2(東京公演)
作・演出/上田誠
出演/石田剛太、酒井善史、諏訪雅、角田貴志、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力、松田暢子、山脇唯