(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

〝ボボボーボ・坊ちゃん〟石原正一ショー

西の方角からの風聞を耳にするたびに、関西の劇団にも大いに興味をそそられるわたしであるが、ここのところいざ観てみると、どうも波長が合わない場合が多い。期待して臨んだ売込隊ビームの〝よせばいいのに〟も、ヨーロッパ企画の〝ブルーバーズ・ブリーダーズ〟も軒並みだめで、クロムモリブデンの〝猿の惑星は地球〟がかろうじて楽しめた程度。(これとて、前半はまったく乗れなかった)こういう不幸な結果は、たまたまの巡り合せなのかもしれないのだが。
東京は3度目という石原正一ショーも、去年の公演〝十三人姉妹〟を見逃してしまったことが悔しく、今年こそと期待を膨らませていたのであるが…、残念なことに、〝ボボボーボ・坊ちゃん〟は、やはりピンとこなかった。文部科学省お墨付きのエゴイスティックな優等生(各務立基)が転校してきて、学園は大騒ぎ。粛清の嵐が吹き荒れる中、マサトシ(石原正一)は、ガールフレンド(斉藤ゆき)を置き去りにして、怪しげな科学の教師(今奈良孝行)とともに、新型のデロリアンで明治時代の松山へと旅立つ。
バック・トゥ・ザ・フューチャー〟と〝坊ちゃん〟を結びつける馬鹿らしさと強引さは、おそらく石原正一ショーの売り物だろう。しかし、このハチャメチャな物語には、役者の側にも観客を強引に巻き込むような、どこか破天荒なエネルギーが必要とされるような気がするのだが、そのあたりがいまひとつ。
今回は、地元大阪と東京では完全なダブルキャストになっていて、東京キャストの役者たちは(知らない顔もあるが)きわめて達者だし、事実舞台上のスピーディな動きも悪くない。しかし、一部の役者に、あと一歩というところの躊躇いがあるのではないか。それが物語の温度を下げているように思える。幕開きのダンスシーンは素晴らしく、あのエネルギー(というか乗り)が持続すれば、また違う芝居になったのかもしれないと思うのだが。
ところで、HEPHALL公演の大阪キャストを見ると、人数だけでも倍近くいるではないか!賑やかな筈の舞台がいまひとつ寂しく思えるのは、この人口密度の差が原因じゃないか、という気もしてくる。ホームグラウンドでの乗りの違いなども、ぜひ見比べてみたいものだと思う。(90分)

■データ2006年11月30日ソワレ/ザムザ阿佐谷
11・29〜12・3(東京公演)
作・演出/石原正一
出演/康ヨシノリ(康組)、今奈良孝行(エッへ)、各務立基(花組芝居)、岸潤一郎(NAィKI)、宮村やよひ(ひげ太夫)、石川ゆうや(ダーリン)、猪狩敦子(bpm)、福山しゅんろう、板橋薔薇之介、斉藤ゆき、石原正一
舞台監督/久保克司 照明/松本大介 音響効果/兒島塁