(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「西洋のレイルボーイズ」とくお組第11回公演

とくお組は、2003年に結成されたコメディ志向の劇団で、母体は慶應義塾大学の演劇サークル、演劇研究会と創像工房 in front of.。わたしは初見だが、昨年のフジテレビ主催の「T★1演劇グランプリ お台場SHOW-GEKI城」に「近未来パーク」という作品でエントリーし、審査員特別賞に輝いた実績をひっさげてのアゴラ劇場進出。
とある国のとある駅。ごくたまにやってくる列車は、乗降客がめったにないこの駅を素通り。そんな駅にも、駅長以下3名の駅員がいる。駅には常連客もいて、彼のお目当ては駅に併設された図書室。どうやら長く通っているようで、その蔵書の全部を読み終えてしまう日も遠くない様子だ。
休みをとって、遠出をしていた駅員が帰ってきた。彼は3日をかけて、海を越える旅をしてきたと語る。彼の物語る不思議な体験談に耳を傾ける駅員たち。そんな折、定例の人事異動が発表され、新任の駅長がこの駅にやってくることになって。
個人的には、ヨーロッパ企画を思い出した。しかし、本作についていえば、あそこまでのアイデアもなければ、笑いもない。さほど濃いものではないが、ファンタジーの色あいもあって、おそらくはそのあたりが持ち味ではないかと思うのだが。しかし、それとって設定の域を出るものでなく、展開に乏しい。というか、ほとんど何かを物語ろうとする展開がないのだ。
品よく、スマートな役者たちは、それぞれに個性があるようで、キャラクターも親しみ易いのだが、彼らの溌剌と芝居を見るにつけ、物語の不在はどうしたものかと思ってしまう。上演時間も短く、アナウンスよりも10分ほど早く終わってしまったのは、薄味の印象をさらに強くしている。
彼らがアゴラ劇場でやりたかったのは、この雰囲気だけの芝居なのか、という素朴な疑問が残ってしまった公演だった。(70分)

■データ
劇場エレベーターまでをも舞台装置に組み込んだアイデアには感心したマチネ/こまばアゴラ劇場
4・16〜4・20
作・演出/徳尾浩司
出演/篠崎友、北川仁、堀田尋史、永塚俊太郎、鈴木規史、高良真秀