(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「サスラウビート」カナデコトビート第3回公演

カナデコトビートは、青年団演出部の相馬加奈子が主宰する演劇ユニット。彼女が早稲田大学演劇倶楽部時代の2008年結成で、どらま館での2回の公演を経て、あっという間の王子小劇場進出。

日本の西の方の島。比較的、美人、島美人のサルビアユーカリ姉妹は民宿を営んでいる。民宿は島に訪れた旅人たちの憩いの場。たくさんの旅人が、今日も海を眺めてる。居心地がいいのか、この島にきた人は、この島を離れられなくなるみたい。ある日、知らない街の高校生が3人、修学旅行でこの島にやって来た。言動が怪しい高校生、3人トリオ。何だかワケあり。でも、目だけはやたらキラキラしてる。カナデコトビートがお届けする、世界から全力でバックれた人たちの物語。 (サイトよりあらすじ引用)

早稲田大学周辺の才能は大いに気になるけど、なかなか学内や劇研アトリエ、どらま館にまでは足を運ぶことができない。というわけで、カナデコトビートも、観てみたくて気を揉んでいたが、そうこうするうちにさっさと向こうからやって来てくれました。いつの間にか主宰も大学を卒業し、青年団の演出部に籍を置いているようで、そんな前向きなスタンスがこの公演にもしっかり現れている。
出てくる人物のほぼすべてが、作者自身と同世代か隣り合わせの世代ということもあって、その描き方にブレがない。とはいえ、ひとりひとりに等身大で無理や誇張のない存在感や、人間としての魅力がきっちりと備わっているのは、やはり相馬加奈子の才能とよぶべきだろう。
主人公らにとっては非日常の修学旅行のばっくれも、ドラマチックなこととはほとんど無縁で、牧歌的な雰囲気すら漂ってくる。そんな物語の素朴さがなんとも魅力だが、やはりなんといっても弱さを抱え、不器用さを隠せない者への作者の優しく暖かいまなざしがいい。癒しにも似た滋味がにじみ出ていると思う。
プロダクション全体に卵の殻を引き摺っているような幼さもあるが、これからの成長が大いに楽しみだ。(90分)

■データ
二十代前後の観客がほとんどを占めていた最終日のソワレ/王子小劇場
8・6〜8・10
作・演出/相馬加奈子
出演/佐賀モトキ、重岡漠、白井肉丸(サイバー∴サイコロジック)、スズキヨウヘイ(スズキ式ドロップス)、並木大輔、堀雄貴(犬と串)、松田明子、横山真弓、太田美登里、川端さくら(乙女装置)、貴島千華(安全品(近々改名の予定あり))栗原香(てあとろ50’)