(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「MY NAME IS I LOVE YOU(英語版リマスター)」快快(faifai)

このカンパニーらしいちょっとお洒落な会場で、フード、ドリンクなどを口にしながら、お気楽に楽しむ2005年初演作品の英語版によるリメイク、リミックス上演作。なんでも、今年8月にハンガリーのブダベストでの海外公演を控えているそうで、めでたいことだ。
近未来のお話。渋谷の街は、ちょっとしたセックスシティの様相を呈しているのか、性的な奉仕を提供するロボットやらアンドロイドがうようよ。美容院に行くつもりで家を出た主人公の青年も、たちまち彼女たちやちょっとコワいポン引きのお兄さんにまとわりつかれる。しかし、潔癖なのか、生身のセックスが苦手な彼は、腰が引けてばかり。そんな彼の前に、未来からタイムスリップしてきた不思議な少女が現われ、ふたりは恋に落ちてしまう。
この主人公と未来少女の話が実に素敵で、わたしは遥か昔に観た自転車キンクリートの「ほどける呼吸」を思い出した。京晋佑と三輪規子のちょっとファンタスティックなデートの場面、良かったなぁ、とちょっと遠い目。
で、このボーイ・ミーツ・ガール、そしてアンドロイドが真の愛に目覚めていくロマンチックかつシリアスな展開が絡み合って進められていくのだけれど、過激ともいうべき快快の身体表現が今回も大爆発。狭い舞台からはみ出しそうになりながら、豪快な動きで、しかし繊細な物語を紡いでいく。そして、激しさの後を追いかけるようにやってくる叙情。いつものことながら、これがまたいい。
今回のチャレンジであろう英語の台詞だけれども、ボイスチェンジャーを使って同時通訳のように進めていくあたりは、快快らしい閃きを感じる。中3程度だという英語表現も、彼らの場合、稚拙さをひとつの持ち味にできる開き直りにも似た強みがあるし。役者では、いつものように大道寺梨乃にスポットが当たっているが、ツッコミ役にまわる野上絹代もわたしには印象深かった。(60分)

■データ
約5分のボーナストラックのおまけも嬉しいソワレ/ゴタンダソニック
3・7〜3・8
作/北川陽子 演出・前説/篠田千明
出演/天野史朗、大道寺梨乃、中林舞、野上絹代、山崎皓司、NAGY OLGA