(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「月並みなはなし」4×1h project Play#2

前回に続いて、再度の引用になるが、時間堂とelePHANTMoonが共催する4×1h projectは、出演者が4人くらい、場所を選ばず上演可能、質の高い1時間くらいの短編という三つの条件にかなう作品を上演する試みだ。そして、さりげなくも、非常に重要な「質の高い」という条件は、今回もきちんとクリアされている。これは、素晴らしいことだと思う。
その上でということになるが、気になる点をひとつ。演出者の意図だけでなく、そもそも今回の企画の狙いであった演出者の中屋敷のカラーを打ち出す面白さというのは、十分達成されている。マシンガントークを連発する中で、人物間の微妙な空気を醸すことによって、一瞬の叙情を生み出す演出手法は、この人ならではのものだと思う。
しかし、この戯曲でこの演出家という組み合わせは、どう考えてもベストとは思えない。冒頭の掴みの慌しさは、複雑な設定を観客が理解するのには不適だし、二組のキャスティングを並行して上演する意味もピンと来なかった。作品のクオリティ、演出家の技量を考えると、面白ければ何をやってもいい、のもうひとつ上の段階の何かを伝えてほしかったと思う。
しかし、破天荒な演出下で蹂躙(@黒澤世莉)されながらも、戯曲の観客に訴えかけてくる力はちっとも薄れてなかったのには、驚かされた。この本、本当にいいですね。
演出をくさしたような書き方になったが、多数の役者たちの持ち味をたっぷりと引き出していた点はさすがだと思う。(50分)

■データ
この劇場は初めての最終日マチネ/新宿シアターミラクル
1・23〜1・30
作/黒澤世莉(時間堂) 演出/中屋敷法仁(柿喰う客)
出演/浅見臣樹、石澤サトシ(オフィスインベーダー)、江原大介、太田幸絵、大竹悠子(ユニークポイント)、乙黒史誠、熊川ふみ(範宙遊泳)、佐野功、猿田モンキー、椎名豊丸(チェリーブロッサムハイスクール)、二階堂瞳子(バナナ学園純情乙女組)、林佳代、星野奈穂子、緑川陽介、百花亜希、山本真由美 (舞夢プロ)