(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「動転」コマツ企画第9回公演

こまつみちる、本井博之、浦井大輔、川島潤哉という異能の一団コマツ企画の新作。バックステージもので、ちょっと大げさに言えば、議論を呼び起こすこと必至の型破りで掟破りの野心作である。
零細の印刷工場を経営する父親とその一家。しかし、不景気で家業は傾き、母親は家を出てしまう。酒びたりの父親とともに残された三人の兄弟は、子ども部屋で不安な夜を迎えている。額を寄せて、どうしようか相談する長男と長女。そこに、わけのわからない祖父が加わっても、事態は一向に好転するはずもなく。
というのは、実は作中作の舞台のお話。とある劇団のつたない舞台は、しかし開巻間もなく、役者は右往左往し、演出家まで舞台にあがってしまう。準備不足、力不足、さらに劇団内の内紛、私憤、恋愛までが渾然となって、やがて彼らの舞台は果てしなく迷走していく。
芝居と現実の境界線を崩す部分に、ちょっとだけメタを感じる。客席に仕込みがあったり、アフタートークが芝居の一部だったりと、思いつくことはすべてやったという感じ。エピソードの交通整理が不十分だったり、部分的に雑なとこもあるけれど、これだけ仕掛けやネタを詰め込んでくれれば立派だと思う。ちょっとやり過ぎでは、と思わせる過剰さが彼らの持ち味だろう。
欲をいうなら、内輪のエピソードを使うにしても、もっと普遍的なものとして見せる工夫があってもいいとは思った。公演終了後、HPを覗いたら、ちょっと自暴自棄気味の挨拶が載ってました。観客に唾を吐きかける(比喩です、もちろん)ところもあったので、いろいろと反響もあったのでしょう。でも、まぁ、そう腐らずに、次回もがんばってください。(110分)

■データ
開演前に消防法云々でクレームつけてたお客さんってあれも仕込みなの?のソワレ/新宿シアターモリエール
10・2〜10・5
作・演出/こまつみちる
出演/本井博之、浦井大輔、川島潤哉、こまつみちる、斎田智恵子、鈴木燦、平間美貴、松本美奈子、清水穂奈美、伊藤淳二、成川知也、遠藤弘章(東京タンバリン)、七味まゆ味(柿喰う客)、宮本奈津美(味わい堂々)、相馬加奈子(カナデコトビート)、高羽彩(タカハ劇団)