(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ペガモ星人の襲来」G-up presents vol.6

小劇場系のスターをこれでもかと総動員しての公演。大王こと後藤ひろひとの旧作のようだが、ネット、フライヤーなどによれば、?1995年、当時「遊気舎」二代目座長だった後藤ひろひとが、関秀人主催の「立身出世劇場」に書き下ろした作品が十数年の時を経て、満を持しての再再演!?とのこと。
テレビはまだ普及しておらず、ラジオドラマが全盛だった時代のお話。ラジオ局では、自転車操業でドラマの制作が行われていた。ときに呆れた失敗もあるが、若手中心の現場のスタッフたちには活気がある。そんな折、海の向こうからオーソン・ウェルズのSFドラマが大ヒットしたという風評が伝わってきて、彼らにも同じ題材の『ペガモ星人の襲来』を作るよう命令が下るが。
一方、それから50年後。かつての『ペガモ星人の襲来』に興味を持った放送ディレクター(大内厚雄)がいた。しかし、当時ドラマはなぜか第一回の放送のみで打ち切られていた。どうやら生放送中に起きた事件が原因だったらしい。当時のことを知る仁太(瀧川英次)は、真相について黙して語ろうとしない。その日を境に姿を消した効果音の職人黒さん(赤星昇一郎)の身に、果たして何が起こったのか。
初演のほぼ同時期に、当時東京サンシャインボーイズを率いていた三谷幸喜による「ラジオの時間」(1993年)という題材のカブる作品があって、比較するわけではないが、どうしても見劣り感を抱いてしまう。音響の職人はなぜ消えたかという謎は、明かされてみればあまりに貧弱だし、登場人物たちのラブアフェアも、付け足し感が否めない。コメディ系の人気劇団が勢いで見せるにはいいかもしれないが、冷却期間をおいて再演という形で改めて俎上にあげるには、ちょっとどうなんだろうか、という疑問がわいてくる。
ただ、それを補って余りある役者たちの見せ場が多数あったのが良かった。岩井秀人が役者としての仕事をしているし、ちょい役なのが惜しい森下・板倉のクロム組、いつも達者な柿丸美智恵もいいし、後藤飛鳥の純情もキュンと来る。(キャラメル組は、小椋はさておき、大内はやや浮いてる)無駄な豪華さが鼻につくところもあるが、脆弱な脚本にあれこれ肉付けをして、舞台として成立させた役者たちには拍手を送っていい。(120分)

■データ
若い森田とか、もっと出番あってもいいよねのソワレ/下北沢駅前劇場
8・22〜8・31(東京公演)
作/後藤ひろひと(Piper) 演出/関秀人
出演/大内厚雄(演劇集団キャラメルボックス)、吉岡毅志(演劇集団スプートニク)、小椋あずき、有川マコト (絶対王様)、柿丸美智恵(毛皮族)、岩井秀人(ハイバイ)、瀧川英次(七里ガ浜オールスターズ)、町田カナ、森啓一郎(東京タンバリン)、後藤飛鳥五反田団)、森下亮(クロムモリブデン)、板倉チヒロクロムモリブデン)、黒岩三佳(あひるなんちゃら)、森田祐吏(北京蝶々)、赤星昇一郎