(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「MOTION & CONTROL」サスペンデッズ第五回公演

2005年から公演をうってたんですねぇ、サスペンデッズ。前回あたりから好意的な劇評が劇的に目につくようになって、未見のわたしはとりあえず新国立劇場の〈シリーズ・同時代〉の「鳥瞰図」(早船聡・作)に足を運んで、ビンゴ!というわけで、サスペンデッズを観るのは今回が初めて。
夜汽車で故郷へと向かうふたりの男。村瀬(佐野陽一)と川原(伊藤聡)は、どうやら大学時代の友人のようで、喪服姿から察すると、用向きは弔問らしい。15年ぶりの再会というふたりのとりとめもないやりとりから、次々と思い出されていく過去の思い出。ふたりは映画研究会に所属する仲間だった。
しかし、ひょんなことから彼らはひとりの女子(松本理奈)を挟んでの三角関係に陥ってしまう。彼女は、村瀬の元カノで、3年もの浪人生活を経て、この大学にやってきた。村瀬の冷淡な態度でいったんは彼女の気持ちも川原に傾くが、運命の悪戯は彼にとって残酷な結果をもたらすことに。
OFF・OFFという入れ物のサイズに合わせたかのようなコンパクトなまとまりというのが第一印象。ただし、こじんまりというよりは、端整な作りと言った方が相応しく、好印象ではある。夜汽車、大学の部室、喫茶店と、舞台装置の組み替えで場面を変えていく巧さや、現在と過去を行き来しながら、物語の輪郭を浮かび上がらせる手法が、実に達者。見応えのある舞台に仕上がっていると思う。
ただし、お話の作りはやや予定調和で、いわゆる習作の域を出ていないもどかしさがある。既視感のある場面が多く、才能をめぐる持つ者と持たざる者の葛藤や、青春時代を回想するノスタルジーなどがもっと色濃く出てもよかったとも思う。(80分)

■データ
そういやPFF(ぴあフィルムフェスティバル)ってあったなぁ、と回顧感にひたるマチネ/下北沢OFF・OFFシアター
8・19〜8・24
作・演出/早船聡
出演/佐野陽一、伊藤総、佐藤銀平、松本理奈、白州本樹(スターダス・21)