(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ボクコネ〜ボクはテクノカットよりコネチカット〜」タカハ劇団納涼番外公演

学外初進出となった春の王子小劇場で、大向こう(?)を唸らせた早稲田出身のタカハ劇団。それから間を措かず、お次はなんと駅前劇場進出だが、今回はまぁやや控えめに番外公演と銘打って、2005年の旗揚げの作品をリニューアルしての再演のようだ。
ちょっとボケが始まっているおばあちゃん(田中沙織)が大家のおんぼろアパート。自称ヒッキーの大学生板垣(西尾友樹)の部屋には、居心地がいいのか、なぜか野放図な住民たち(異儀田夏葉、森戸宏明)が集まってきては、好き勝手なことをやっている。
そこに、大家さんがベルマークを集めて応募したら、宇宙旅行が当たってしまったという、降って湧いた嘘のような話が。怪しい男女のナビゲーター(川島潤哉と鈴木麻美)が現われ、アパートは建物ごと宇宙へ飛び出す。しかし、そこで大変な事態が。故郷の地球が、彼らがいぬ間に滅んでしまったのだ。還る星を失ったおんぼろアパートは、板垣らを乗せてどこへ行くのか?
出発点は、映画の「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のようだ。といっても、人工衛星に乗ったまま還らぬライカ犬というモチーフとしてだが。上演前にテレビのモニターで流れているのは、おそらくこの映画だろう。
いかにも学生演劇らしいアイデアの破天荒さと緩〜い設定が目立つ前半は、行き着く先が見えない(というか、それがないのではないかと思えて)かなりの不安を感じる。しかし、それでも、達者な役者たちに引っ張られて観ていくと、後半も押し迫ってきてようやく着地点が見えてくる。前半とのちぐはぐ感は否めないが、習作としてだったら十分にありのお話だろう。
役者を贅沢に使えることをフルに利用した舞台で、異儀田夏葉の奔放さ、川島潤哉の自由さ、鈴木麻美の落ち着きなどが光っている。その中にあって、舞台上では珍しい田中沙織がやや浮いた感じだが、最後の最後でなるほどと唸らせる。作・演出はこのシーンがやりたかったのだな。大家さんと彼女の脳内宇宙人(だよね、酒井杏菜)が見せる幕切れのワンシーンが、はかなく、切なく、(視覚的にも)美しい。(100分)

■データ
かなり意味不明なサブタイトルも愉快な初日ソワレ/下北沢駅前劇場
8・14〜8・17
脚本・演出/高羽彩
出演/異儀田夏葉(ヨシロォの夏は夢叶え冒険団)、川島潤哉コマツ企画)、酒井杏菜(メタリック農家)、鈴木麻美(北京蝶々)、田中沙織(柿喰う客)、西尾友樹、森戸宏明(動物電気