(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「生憎」劇26.25団第7回公演

異常なものはまったく載ってないのに、どことなく不気味さ漂うチラシ(失礼!)がやけに印象的な劇26.25団。HPによれば、読み方はゲキニジュウロクテンニーゴーダンで、2004年11月旗揚げだそう。
幕開きは、舞台狭しと繰り広げられる縄跳び。ひかげ村にある食肉工場ドリスの物語である。所長のアザミの管理下、今日も工場は元気に操業している。社会的に不適応な人々ばかりが集められるこの工場では、ある生き物を原材料として加工食品を生産している。なぜか肌の色が黒くなっていくドリスの従業員。実は…。
このドリスには、とんでもない秘密があるようなのだが、それを探るために潜入したスパイは、診療所の医師に正体を見抜かれ、薬物でコントロールされてしまう。一方、アザミは所長の仕事にのめりこみ、長い間家族と離れ離れで暮らしている。心配する妹が幾たびも彼女を訪れるが、アザミは家に戻る決心ができない。果たしてアザミは、そして工場はどうなるのか?
ある種の共同幻想みたいなものがこの工場には隠されていて、と暗示があるようにも思えるが、最後の最後まで尻尾はつかませてくれない。ただし、異常な状況下を描いているわりには、登場人物のひとりひとりをきっちりと描かれている。わけのわからない物語を見せられても、観客はそれが苦にならないのは、作者の意図が実は明快だからだろうか。
しかし、その意図はまったく見えない。ミステリアスな作りでそこまで思わせぶりに舞台をつくるなら、せめてもう少し物語を提示してほしいのだが。(100分)

■データ
劇場を横に使う舞台装置がなかなか見事だった満員のソワレ/王子小劇場
8・7〜8・12
作・演出/杉田鮎味
出演/赤荻純瞬、長尾長幸、杉元秀透、須藤真澄、林佳代、駒木根隆介(赤堤ビンケ)、上松頼子(風花水月)、親泊義朗(ファンカスキャンパーズ009)、柏村信(安全品)、田島冴香(東京タンバリン)、渡邉香林