(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「八月のバス停の悪魔」ミナモザvol.9

ミナモザは、瀬戸山美咲の作・演出を支えるユニットとして、ほぼ年1のペースで活動を続けている。旗揚げは2001年で、過去8回の公演を行っている。
戦争も末期にさしかかった東京近郊の田舎町。東京では大空襲があって、大きな被害が出たという話が噂で伝わってきている。しかし、都心から離れているせいか、町にはどこか牧歌的な雰囲気もある。この町では、大切な食料である蛙を養殖していて、その指導にあたる軍関係者も東京からやってきて、人々を監視するかのように常駐している。
その町にある使われなくなったバス停のすぐそばに、キミコ(木村キリコ)はひとりの外人ルカ(尾沢治千)をこっそりと匿っていた。彼は、墜落したアメリカ軍の爆撃機のパイロットだろうか、帰国の準備をしながら、味方がやってくるのを待っている。一方、彼に食料をこっそりと運ぶキミコは、都会から疎開者で、ひとりだけ着物を着たりと、周囲からは白い眼で見られている。やがて、玉音放送が流れる8月のあの日がやってくるが。
地元の人と疎開者の摩擦、物資不足の困窮、憲兵の恐怖、迫り来る敗戦の影。太平洋戦争の終戦を予感させる中で繰り広げられるドラマは、怪訝に思えるほどコンサバでフラット。なぜ、ミナモザがと思えるほどに平凡なのだ。そんなありきたりのお芝居が延々と続くあたりが、観ていてやや辛い。
作者の意図がようやく見えてくるのは終盤。なるほど、こういうことがやりたかったのか、と思える仕掛けがふたつ。ミナモザが標榜する「現実と地続きのファンタジー」の構造が突如として浮上するのだが、木村キリコという役者の存在感の上にやっと成立しているといった様子で、そこまでの退屈さと釣り合うかというと、やや微妙だ。サプライズエンディングとしての効果をあげるならば、主人公の浮世離れした生き方にもっと焦点を絞るべきだったような気もする。(95分)

■データ
折からの天候不順でまたもやにわか雨に襲われたソワレ/新宿御苑シアターサンモール
8・20〜8・24
作・演出/瀬戸山美咲
出演/木村キリコ、浮城寿子、岡本広毅(10x50KINGDOM)、鈴木オルガ(10x50KINGDOM)、尾沢治千、中川浩六(侠的令嬢)、松本雄大、斉藤千尋、須田浩章