(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「サナギネ―幼年期の終わりに―」双数姉妹

双数姉妹がまだ早稲田劇研の圏内にあった1994年初演の劇団としての代表作と言われている作品。その頃はお芝居から離れていた時期で、わたしは今回が初見。一度2001年にも再演されているので、今回は再々演となる。(初演、再演ともに、@青山円形劇場
円形劇場を南北で二等分し、その両側でふたつの話が平行して進行していく。それぞれ成体サイド(imago side)、幼生サイド(larval side)と命名されていて、ひとりの女性をめぐって一方は少女時代、もう一方はその二十年後が語られる。わたしが観たのは、その少女時代、すなわち幼生サイドの方である。
北九州で解体屋を営むいいかの次女ヨシノ(浅田よりこ)。ずいぶん前に、父親は浮気をして家を出て行ってしまい、母親(井上貴子)と姉(大倉マヤ)との三人暮らし。家業は、住み込みのふたりの使用人(五味祐司・宮田慎一郎)が手伝っている。
そこに、ふらりと父親(いけだしん)が帰ってくる。絶対に父を受け容れようとしない母。姉も、どこか醒めた目で父親を見ている。父のことや、不思議な外国人の先生(佐藤拓之)との付き合いを母親からとやかく言われ、フラストレーションを募らせたヨシノは、祭りの晩に幼馴染みのユウコ(吉田麻起子)と連れ立って、この島を出て行く計画を実行に移すが。
ふたつの物語がパラレルで進行していく芝居は、ずいぶん観てきたような気がするが、リアルタイムで同時していったふたつが、クライマックスでシンクロする(両方を仕切っていた幕が取り払われる)のは、わたし的には新鮮だった。しかし、いかんせん、お話として見た場合、(成体サイドはスケジュールの関係で観られなかったが)両サイドで合わせて一本の感は否めない物足りなさがある。
それと、やはり反対サイドの音や声が、ああもダイレクトに伝わってくると、気にかかって集中力をそがれること甚だしい。技巧的な面白さを認めるにやぶさかではないが、洗練や物語のカタルシスという点で、いまひとつ。双数姉妹ほどの劇団であれば、もう一段高みを目指す再々演であっても良かったと思う。
しかし、田中桂子、苅部園子(わたしの日は観られなかったが)、大倉マヤと並ぶといいですねぇ、往年の双数姉妹。野口かおるの去就も気になるけど、こういう充実の女優陣が、双数の大きな魅力のひとつだったのだなぁ、とつくづく。(110分)

■データ
大倉さんのバイオリンの響きも素敵だった初日ソワレ/青山円形劇場
作・演出/小池竹見
7・30〜8・3
出演(幼生サイド)/佐藤拓之、いけだしん(猫のホテル)、浅田よりこ、吉田麻起子、小林至、田中桂子・苅部園子(ダブルキャスト)、大倉マヤ(マヤ印)、井上貴子、五味祐司、辻沢綾香、熊懐大介、宮田慎一郎、河野直樹