(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「審判員は来なかった」ペンギンプルペイルパイルズ#13

倉持裕としては5月のM&O Plays プロデュースの「まどろみ」@あうるすぽっと、PPPPとしては去年10月の「ゆらめき」@吉祥寺シアター以来となる新作。今回は、ややスケールを大きくして、テーマは国家。
パリエロは、色々な経緯があってマリムという大きな国から独立した小国だ。建国一周年を祝う大統領とその側近たち。彼らの間では、新しい国家の意識高揚策として新しく考案された国技が話題になっている。しかしその競技、やたらルールが複雑なのが難点で。
一方、独立記念日のセレモニー中に航空機の部品が果樹園に落下する事故が起きるが、そこから豊富な新資源が見つかり、農家に富をもたらす。その富をめぐって起きる混乱、さらに教会では、神官たちが怪しい企みを進めて。すったもんだの混乱が起きる中、新興国パリエロの前途やいかに?
政治、文化、宗教、市民のエピソードが絡まりあいながら織り成していく建ちあがったばかりの小国の物語。寓意があるような、ないような、とらえどころのなさだが、驚かされるのは、いつになく明快な物語のつくり。ポップではあるけど、現実を裏返したような不条理がついてまわるいつもの倉持作品とは、一線を画する。
大統領の執務室、農家、教会、競技場という4つのシーンが、回転する舞台にのっかり、スピーディ切り替わっていく。ひとりの役者が3〜4役を演じる趣向も、軽快なテンポを後押ししていて愉快。観客としては物語の解釈がシンプルになった分、舞台のめまぐるしい展開を追いかけることに注意がいき、いつもとは違った部分の脳を刺激される快感がある。達者な片桐の客演が、舞台全体をいい感じに膨らませている。(125分)

■データ
メタが入った早変わりの着替えも笑えるマチネ/三軒茶屋シアタートラム
7・10〜7・20(東京公演。他に大阪、福岡公演)
作・演出/倉持裕
出演/小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、近藤智行吉川純広安藤聖片桐仁ラーメンズ