(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「まほろば」シリーズ・同時代Vol.3

シリーズ・同時代もいよいよクライマックス。三番手はモダンスイマーズの座付き、蓬莱竜太の登場である。今回の三選手の中では、商業演劇のキャリアからいっても、もっともこの舞台に相応しい作家といっていいかもしれない。
村祭りの晩、男衆たちは神輿を担ぎに出ていて、酒宴の支度をしながら彼らの帰りを待つ女たち。村の本家の主婦ヒロコ(三田和代)は、予告もなく帰郷してきた長女のミドリ(秋山菜津子)のことが心配でしょうがない。ヒロコの願いは、一家の跡継ぎ男子を娘たちの誰かが生んでくれること。次女のキョウコ(魏涼子)には父親の判らないユリア(前田亜季)という娘がいるが、ヒロコは東京で働き、四十過ぎまで独身を通しているミドリが結婚してくれて、念願の男子を出産してくれることに夢を託している。
しかし、ヒロコの不安は的中。ミドリは男と別れてきたという。しかもその原因が閉経だという。え、40歳を過ぎたばかりなのに…。あまりのショックに動揺を隠せないヒロコに、姑のタマエ(中村たつ)は鷹揚に構えて宥めようとするが、聞く耳をもたない。これまた急に里帰りしてきたユリア(前田亜季)の爆弾発言が、さらに一家を大きく揺り動かすことに。
下は小学生から上は老婆まで、広い世代にまたがる女性6人が、女性の生き方をめぐってそれぞれの価値観をぶつけ合い、その違いを浮き彫りにしていく。しかし、そこから女性や母性の普遍なあり方のようなものが浮かび上がってくる。
世代間のギャップや、それぞれの葛藤をユーモアにまぶし、ホームコメディに消化する作者の腕には、堅実な力を感じる。最後を生命の神秘や豊穣のイメージを感じさせる超常現象で締めくくる幕の下ろし方も達者なものだと思う。役者も達者揃いだが、中年にさしかかった女性の焦りと達観を見事に表現して、物語をぐいぐい引っ張る秋山菜津子が、やはり抜群にいい。(105分)

■データ
ぜひとも続けていってほしい好企画ですね、このシリーズ・同時代。のソワレ/初台新国立劇場小劇場
7・14〜7・21
作/蓬莱竜太(モダンスイマーズ) 演出/栗山民也
出演/秋山菜津子、中村たつ、魏涼子、前田亜季黒沢ともよ三田和代