(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「アルケミスト」少年社中 第20回公演

早稲田の劇研から出た少年社中の10周年記念公演第2弾。劇団HPによれば、この「アルケミスト」は10年前の記念すべき第一回公演@大隈講堂裏劇研アトリエの作品で、今回はその再演とのこと。
サンチャゴ(堀池直毅)は旅に憧れていた少年時代の夢を実現させて羊飼いになった青年。羊たちとともに旅から旅の日々に不満はないが、ここのところ繰り返し見る夢が気にかかる。アンダルシアの彼方、砂漠にあるピラミッドに眠る財宝を手に入れる、というのがその内容だ。ジプシーの占い、さらにはアルケミスト錬金術師を名乗る謎めいた男(林修司)にも後押しされ、愛する羊たちに見送られ、彼らを売り払ったなけなしの金を手に、サンチャゴは船に乗る。
アラビアの町で再会したアルケミストを信用し、サンチャゴは金を預けるが、アラビアの町中ではぐれてしまう。途方にくれながらも働き、苦難の旅を続けるサンチャゴは、砂漠でオアシスに住む族長の娘ファティマと出会う。一瞬で恋におちたふたりは結婚の約束をするが、彼女の父親は部族間の戦争で命を落としてしまう。戦争を終焉へと導こうと決意するが、その方法が判らず悩むサンチャゴ。再度の再会を果たしたアルケミストは、おまえはすでにその答えを知っている、と言うが…。
これは素晴らしい出来映えですね。彼らの十八番ともいうべき冒険とファンタジーを基調にした展開で、観る者を飽かさない。お約束のお笑いも、無理なく全体の展開に溶け込んでいるし。この作品を節目に再演する劇団の愛着と思いが、しっかりと伝わってくる。
奥行きを感じさせる彼ららしい舞台の使い方もいいし、等身大なのに、観る者に夢と希望を与えるヒーローとヒロインを堀池直毅と秋山えりが溌剌と演じている。とりわけ秋山えりは、関西弁がチャーミングなファティマもいいけど、かぶりものの羊役がやけに可愛い。得体の知れないキーパースンを演じる客演の林修司もいい配役だと思う。
ただし、クライマックスのあとに待ち受けるエンディングは、いまひとつ呑み込めない気もする。冒頭の朽ち果てた教会に物語が戻ってくるという流れは理解できなくもないが、展開が急過ぎて、説明も不足していると思う。あそこに落とすならば、オチだけでなく観客に共感を得る工夫がいくつか必要だろう。ま、そのあたりは次の再演の課題ということで。(115分)

■データ
姓が変わった秋山えりさん、ご結婚おめでとうございますの初日ソワレ/中野ザ・ポケット 
7・16〜7・21
原作/パウロ・コエーリョ 作・演出/毛利亘宏
出演/堀池直毅、井俣太良、秋山えり、岩田有民、廿浦裕介、森、大、加藤良子、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、末冨綾、林修司(ルドビコ★)