(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「華燭」三鷹市芸術文化センター+高井浩子(東京タンバリン)presents

毎年6月の桜桃忌にちなむ三鷹の〈太宰治作品をモチーフにした演劇〉も、今年で5回目。去年はポツドールだったが、今年は東京タンバリンの高井浩子を招いて、戦後間もない東京を舞台に4人の芸術家たちの姿を描いていく。
画家や作家、文学志望の青年ら4人の男たち。東京の郊外とおぼしき居酒屋に集まっては、芸術を肴に酒を酌み交わし、議論する彼らだが、やがて成功していく者もあれば、落ちぶれて行く者もある。時の流れは残酷にも仲間の絆に楔をうち、彼らの人間失格の姿を徐々に暴いていく。
太宰治の中期から後期作を主題にした物語のようだが、放漫、欲望、嫉妬などから、芸術家という仮面の下で、自らの人間性を貶めていく姿を描いている。夫婦や家族関係の破綻、善良な人の死といった出来事と、彼らの堕ちていく姿を対比させる手法が効果的。実はわたし、東京タンバリンの芝居との相性はあまりよくなかったのだが、これまでに観た高井浩子関連の芝居では、もっとも楽しめた。いつになく演劇的な手法にわざとらしさがなく、登場人物の描き方にも不自然なところがないからだろう。
ただし、場面転換ごとに登場人物たちが能を模した歩き方で行き来するシークエンスがたびたび登場するのだが、わたしは新鮮で面白いと思ったけれど、識者によれば先例があるそうだ。あと、可動式の仕切りを利用した舞台装置は、見た目は面白いが、大掛かりなわりにはあまり効果をあげてないように思えた。(125分)

■データ
空席がめだってちょっと寂しかった平日ソワレ/三鷹市芸術文化センター星のホール
6・27〜7・6
作・演出/高井浩子
出演/今井朋彦(文学座)、井上幸太郎、佐藤誠(青年団)、 瓜生和成、森啓一郎、坂田恭子、島野温枝、ミギタ明日香、遠藤弘章、大湯純一、大田景子、塩入美喜子、田島冴香