(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「夜明け前後」中野成樹+フランケンズ、の短々とした仕事その3

うかうかしていると、つい公演を見逃してしまいます、フランケンズ。というか、フランケンズではないけど、今年2月のE-Pro@江古田ハウス(中野成樹誤意訳)は、気がついたら終ってました。要マークだな、江古田ストアハウス。そのE-Proで上演したウィリアム・サローヤンの「おーい、救けてくれ!」(上演タイトル「よくないこと」)を、今度はフランケンズのメンバーでやってみようというのがどうやら今回の意図らしい。
テキサス州のとある田舎町にある保安官事務所の牢屋。モーションをかけた人妻に逆にだまされたとかで、旅の男が牢屋に入れられている。囚われの旅人は、彼の面倒を見てくれる17歳の賄いの少女を口説き、牢屋から出してくれるように懇願する。ふたりの間には、やがてほのかな愛情が芽生えるが、非情にもそれを断ち切るような出来事が旅人を襲う。
サローヤン原作の部分は、やや淡々と素っ気なく、ついついサラリと流し観てしまう感じ。おそらくは女性にかけては口八丁手八丁の旅人が、純情な少女を説得するうちに、気づいてみれば愛情が芽生えていたというお話なのだろう。悪くはないのだが、前述のような理由から作者(誤意訳者)の意図を図りかねる物足りなさもある。
注目は、今回の上演のために付け足された原作にはないエピソードで、乞局の下西啓正が脚本を提供している。物語の前日談にあたる物語で、サローヤンの部分とは似ても似つかない捩れ具合だが、演じる役者たちの熱演もあり、こちらは十分に惹きつけられた。ただし、正直、前半とは、マッチングしていない気がした。
さらに、休憩を挟んで、カーテンコールに相当する合奏(環境音楽風のオリジナル曲)まである。公演全体では、サローヤン、下西啓正、合奏とひとつひとつのパートはバラバラなのだが、その異種の賑やかな組み合わせが、なんとも心地よい和みを生んでいるあたりが愉快。不思議なコラボレーションを楽しませてもらった。(芝居55分+休憩5分+音楽5分)

■データ
不安感を刺激される五寸釘を使った舞台美術はちょっと嫌だなと思ったマチネ/江古田ストアハウス
6・13〜6・16
作/ウィリアム・サローヤン 誤意訳・演出/中野成樹 一部(後半)台本/下西啓正(乞局
出演/村上聡一、福田毅、野島真理、石橋志保