(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「長春:ぐあいが悪くてお休み」ワワフラミンゴ

下北沢の商店街の奥まったところにあるファインホール。町会の集会所って感じの劇場らしくないこの劇場で、ワワフラミンゴは過去に何度か公演している。なるほど、彼女らにぴったりの自由でほのぼのした空間なのだけれど、なんとこの6月で閉館になってしまうとのこと。なんだかファインホールとワワフラミンゴ、いい組み合わせなのに、とても惜しい気がする。
波留(北村恵)は、今日は仕事を休んで家でだらだら。本を読んだり、ハチミツをそのまま飲んだり。そこに訪ねてくる友人たちたちへの説明は、ぐあいが悪い、と繰り返すばかりで、実は仮病なのかもしれない。一方、ふたりの少女による本の話。床に積み上げられた本を、彼女たちはいい本とわるい本に選別していく。
登場人物たちのとんちんかんなやり取りと彼女たちを取り巻く不思議な浮遊感。しかし、そこにはわれわれの常識とはまた違った生活観が確かにあって、そのうえに成立しているひとつの世界は、なるほど一種のパラレルワールドかと思った。
難解とも言われる彼女たちの会話劇だが、一見噛み合ってないようにみえて、彼女たちの間ではコミュニケーションがきちんと成り立っている。そういう意味で、いうなれば異なる文化との遭遇、とでも言おうか。耳鳴れない言語のエキゾチックなボーカルが入った音楽にも例えたくなる。わたしは、それを耳に心地よく感じたが、戸惑いをおぼえる観客をも退屈させないあっという間の上演時間が絶妙。(45分)

■データ
チケットがわりの布製のコースターが可愛かった初日マチネ/下北沢ファインホール
5・31,6・1,4,7,8
作・演出/鳥山サチ
出演/菊地千里、北村恵、すどうりえこ、宍戸円、ニコ、菅谷和美(野鴨)