(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「プール」タカハ劇団第四回公演

キャラメルボックスの結成メンバーたちが所属していたことでも知られる早稲田大学のサークル〈てあとろ50’〉。そこにいた高羽彩が、2005年早稲田大学にて旗揚げしたプロデュースユニット。学生会館やどらま館での上演もなかなか好評で、いよいよ学外へと進出することに。
高額の報酬を保証するアルバイト募集のポスターを見て、ひとりの学生が訪ねてくる。ここは、日東大学医学部の旧館地下一階にある解剖学関係の分室。教授の助手をつとめる男や大学の経理の職員も出入りしているアルバイトたちの控え室。そこで、行われているのは死体洗いと言われるホルマリンのプールで保管されている死体の管理の仕事だ。
万年の人手不足ということもあって、報酬にひかれてやってきた望月も即採用。最初こそ卒倒して皆を慌てさせたが、すぐに仕事に馴染み、同僚の学生たちとも仲良くなっていく。実はここでは秘密裡に、教授の助手が中心になって割はいいが違法な小遣い稼ぎが行われていた。それは、人体のパーツの売買。望月はこのヤバい仕事にも、たちまち慣れてしまうが、この職場に隠されたとんでもない秘密を彼はまだ知らなかった。
そもそもはこの題材を取り上げた時点で、半分は成功を約束されたようなものかもしれない。死体洗いや人体のパーツ売買には、虚構としてのいかがわしい魅力とともに、一抹のリアリティがあって、物語はそれを絶妙の按配で掛け合わせてみせる。題材の旨みに寄りかからず、都市伝説を幾重にも組み込んだような面白さはなかなか見ごたえがあって、最後の最後まで観客を飽かせない。ラストシーンの時系列をちょっと入れ替えた演出も成功している。
また、今どきの青春群像というか、アルバイトに従事しているフリーターたちの描き方にも翳りのある面白さがあって、登場人物の微妙な欠落感のようなものを、役者たちがそれぞれの個性で演じているのにも感心した。技量に若干のばらつきはあるのは仕方のないところだと思うが、こういう若手の公演には欠かせない演クラ出身の石澤彩美が華を添えていて、頼もしい。(100分)

■データ
ホルマリンの匂いと死臭が漂ってきそうな気がして仕方なかったマチネ/王子小劇場
5・2〜5・6
脚本・演出/高羽彩
出演/石澤彩美、井手豊(安心くり太郎)、猪瀬早紀子、浦井大輔(コマツ企画)、岡本篤(劇団チョコレートケーキ)、兼枡綾、久我真希人(ヒンドゥー五千回)、鈴木ハルニ(劇団コーヒー牛乳)、永山智啓(elePHANTMoon)、西尾友樹、高羽彩