(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ヤクザとアリス」ろりえ第1回公演

所属役者の客演とか、オムニバス企画への参加とか、何かにつけ目にとまっていたので、今回が正式な旗揚げ公演とは、やや意外なろりえ。早稲田大学の劇研の支流にして、対極でもある早稲田演劇研究会に所属する劇団で、作・演出の奥山雄太はその通称エンクラの21期生とのこと。
客入れの時から、まるでハンプティダンプティのように腰掛けた舞台上手上方から劇場内を見下ろし、見渡すロリ系ファッションの少女。彼女、すなわちアリスがいるのは、おそらく神の視点だろう。彼女の眼下で繰り広げられる、人間たちの生々しくもしょうもない物語が繰り広げられていく。
椅子代わりに少年をペットのように飼う自傷壁ある少女のリスカ。ファーマシーでバイトをするも、店でも自己チュー爆発で、呆れる店長はリスカに何もいえない。一方、その店長はヤクザの恋人がいる。しかし、忙しいヤクザはほとんど一緒に居てくれないため、彼女はストレスをつのらせるばかり。そして、不味い料理しか出せない料理屋の板前とその彼女。板前はサディスティックな愛情で彼女をいびって、いたぶり尽くすが、彼女の方はそれにひたすら耐え、その愛を受け容れている。この男女らのどうしようもない関係は、ひとりの少女が長い引き篭もりを脱したことから、とんでもない化学反応を起こし、アリスを敵に廻して地球脱出の事態へと突き進んでいくことに。
詳しいことは判らないが、ド◎スチールの後輩、カナデコトビートの先輩にあたるのかな?とにかく、エネルギッシュという言葉では括りきれない、役者たちの捨て身の芝居で、強引に物語は進められていく。あえて言葉を探すとするならシュールだが、言いようのないハチャメチャかつ過剰な展開で、観るものの脳みそをぐちゃぐちゃにしてくれる。(褒め言葉
ヤクザのことを慕う組長の息子のシーンが最初と最後にあって、一応の体裁は整えているようにも思えなくもないが、ちょっとツライ。中間部も、流れに乏しく、団子状態の印象がある。ひとつひとつのシーンは、それなりに印象的なのだから、それを繋げていく工夫がほしいところだ。
とにかく元気なことはいいことだ的な褒め方は、彼らにとって不本意かもしれないが、そこからはみ出す何かは未だ見えない。この未知数が、どういう方向に転がりだすのか、興味をもって見守る所存なので、今あるやり過ぎの精神を忘れることなく突き進んでもらいたいものだ。(120分)

■データ
客席に後輩を見守るRONNIE ROCKETの仗桐安さんを見かけて、勝手に心温まった最終日ソワレ/早稲田どらま館
4・25〜4・28
作・演出/奥山雄太
出演/梅舟惟永、斉藤加奈子、志水衿子、徳橋みのり、高木健、松原一郎、本山歩、石丸香織(劇団TipTap)、横山翔一(お前と悪戯酒)、奥山雄太