(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「雷電甲子園」雷電第三回

江戸時代の力士、雷電爲右エ門からその名をとった雷電。出演者らが大所帯で重量級だとのことからの命名だとか。KAKUTAの成清正紀がプロデュースするユニットのようで、太田善也散歩道楽)、桑原裕子(KAKUTA)、しおつかこうへいと(桜丘社中)いう脚本に豪華な布陣を敷いたオムニバスを、プラチナペーパーズの堤泰之が演出する。
とある地方都市で開催されている高校野球全国大会の代表決定戦。といっても、球児たちが目指しているのは甲子園ではなく神宮。選手らは定時制に通う高校生たちだ。決勝戦にのぞんだ七日市高校は、おりしも8回裏が終わって1−0で負けている。現在試合は降雨により中断中というところで、物語の幕があがる。
三部構成で、新聞部、チアリーディング部、野球部というそれぞれの球場控え室での物語が語られていく。予備知識をまったく持たないで劇場に足を運んだわたしは、第二部の冒頭で、小道具の掛け時計を見て、同じ時間帯に並行して起きている出来事を描いていることに気づき、その趣向にちょっと感動した。主催者側は、これをザッピングシステムと呼んで、オリジナルとPRしている。(うーん、先例はいくらもあるような…)
3つのエピソードの中に傑出したものはないが(というか、いずれもやや大味)、いい意味で肩の力がぬけている。太田善也にしても、桑原裕子にしても、自ら舞台上に登場し、楽しそうに役柄を演じていることからも、この公演がお祭り的な乗りのものであることが判るというもの。
ということで、賑やかだったり、楽しかったり、それ自体はいいのだが、役者が多すぎるせいか、やや散漫な印象があるのは気になるところ。エンディングにイマイチしまりがないのも残念。例えば、3つのエピソードが最後にシンクロするなどの面白みが最後にあれば、全体の印象もさらにワンランク上に行けたのではないか。(120分)※9日まで。

■データ
二日続けて(らしい)の開演20分押しはちょっとどうかのソワレ/新宿シアターサンモール
3・5〜3・9
作/「新聞部」太田善也散歩道楽)、「チアリーディング部」桑原裕子(KAKUTA),
「野球部」しおつかこうへい(桜丘社中)
演出/堤泰之(プラチナペーパーズ)
出演/麻生美代子俳協)、桑原裕子(KAKUTA)、植田裕一(蜜)、松井基展(モンキーworks)、斉藤佑介(サワズカムパニー)〜全エピソード
大谷典之、キムユス(散歩道楽)、しおつかこうへい (桜丘社中)、鶴ひろみ青二プロダクション)、成清正紀(KAKUTA)、、蘭胡蝶(散歩道楽) 〜「新聞部」
川原万季(散歩道楽)、菊地晴香、笹峯あい、田仲祐希、中野順一朗(ラッパ屋)、野澤爽子(KAKUTA)、原扶貴子(KAKUTA) 〜「チアリーディング部」
今奈良孝行(エッヘ)、太田善也散歩道楽)、小橋めぐみ、執行利一、田中完81プロデュース)、谷中啓太(桜丘社中)、横山真二(KAKUTA)、和田太美夫 〜「野球部」