(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「終焉ヶ原で逢いませう」アマネク/020803

アマネクというユニットの実体はよく知らないのだが、桜美林大出身の森田匠が主宰で、森田自身は役者としても青年団や東京タンバリンの舞台で活躍している。最近ではキラリ☆ふじみで創る芝居の「大恋愛」にも出演していた。
アマネクとしては、二年前に「てふてふとやかん」という作品があったようだが、今回はそれ以来となる、おそらくは2回目の公演。「終焉(おわり)ヶ原で逢いませう」は、去年の劇作家協会による新人戯曲賞にエントリーし、一次予選を通過した作品(17作)のひとつのようだ。
取り壊しを間近に控えた某大学の学生会館。そこに部室を構えるサークルの旅行研究会も、引越しの作業に追われている。そんなさ中、十数枚のスナップ写真が書棚の裏側から見つかった。その懐かしい写真の中には、在学中に事故で亡くなった吉村の在りし日の姿もあった。連絡を受けた吉村の兄弟が上京し、その写真を受け取るためサークルを訪ねてくる。
物語を語ることの難しさのひとつは、物語の充実とは別に、語り方のアイデアが重要だということではないか。これが貧弱だと、物語がいくら面白くても、あっけなく、味気ない。そこで、ギャグやコミカルな展開を差し挟むケースをしばしば見かけるが、しかしこれが案外と成功しない。唐突だったり、違和感があったり。
本作の最大の弱点もそこで、水増しというのではないのだろうが、あちこちの挟まれたお笑いのシーンに、ことごとく異物感がある。シリアスな役柄の多かった役者が突拍子もない動きをするのも、やや奇をてらい過ぎに思える。メインの物語の整合性には、よほど舞台上の熟成が必要とされると思しい。
しかし、物語はというと、これがかなりいい。まだ公演中なのでネタバレのリスクを冒すことになるが、故人の死の状況がほのめかされ、作中を行き交うとある人物の正体が暗示される展開からは、ちょっとした怖さが。また、ただひとり、起きている現象に気づく登場人物のひとりの台詞からは、過ぎ去りし青春群像の叙情が立ち昇ってくる。この手のお話としては、よくあるプロットかもしれないが、随所に光る演出があって、はっとさせられる。
勝手な感想としては、傑作になる可能性を秘めた作品の習作的な上演と受け止めたい。近い将来、ブラッシュアップしたこの作品の再演を観られたらな、と思う。(90分)※9日まで。

■データ
開場15分後なのに一番乗りだった平日マチネ/中野スタジオあくとれ
3・4〜3・9
作・演出/森田匠
キャスト/平岩久資、田代尚子、鶴川春男(タテヨコ企画)、齊藤庸介、高橋智子(青年団)ミギタ明日香(東京タンバリン)、下薗琢磨、堀内真奈美、植村宏司(パラドックス定数)、飯島蕗、ギリコツカサ(野獣会JAPAN)、森田匠