(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「蓮池極楽ランド」仏団観音開き第7回公演

仏団観音開きは、聞くところによれば、大阪のUSJのスタッフ(コメディ・アクトレス)を中心に2003年結成された演劇ユニットだとか。わたしは、去年アリスフェスティバルで観逃した「宗教演劇」のちらしが瞼の裏側に悪夢のように焼きついてしまって、今回の東京公演を心待ちにしておりました。
蓮池グランドホテルに併設された極楽ランドは、女将の発案でスタートさせたテーマパーク。出し物は、ドラえもんアンパンマン、キティちゃんといった人気キャラクターの着ぐるみをかぶったホテルの従業員たちが繰り広げる芥川の「蜘蛛の糸」をパロった怪しいオカマショーだ。
しかし、この極楽ランド、実は客寄せが目的ではなく、主人の浮気癖からから女将が逃避する一種の宗教施設だった。そんなホテルに黒い噂が。売り物の血の池温泉が、天然のものではなく、染料を使ったものだとマスコミが暴いたのだ。ほぼ時を同じくして、極楽ランドの着ぐるみも、キャラクター使用料が未払いという話が持ち上がり、騒ぎは大ごとに。
一番面白かったのは開幕の10分、つまり怪しいオカマショーの部分。ミュージカル仕立てのこの部分はどぎつい毒とテンション高さがあって、一体何が始まるのかという期待感が膨らむ。しかし、物語が従業員の不満や、経営者夫妻の冷めた関係を描きはじめると、案外と普通で途端に冷めてしまう。へたうまの面白さがあってもいい筈だが、どうも普通の下手にうつってしまう場面が多い。
テーマパークの現場から持ち帰ったであろうネタの数々も、舞台へのあげ方にやや工夫が足りない気がする。へなちょこな物語にしては、妙な社会性があったり、中途半端な印象がある。いっそのこと、ナンセンスに徹した方が、芸達者の揃ったこのユニットの持ち味をもっと活かせるのではないかと思うのだが。
なお、今回公演後、4人いる劇団員の半数が海外転出してしまうとのこと。活動休止の危機をなんとか乗り越えてもらいたいものだ。(110分)※2月16日に福岡公演あり。

■データ
新宿二丁目ネタの炸裂が愉快なマチネ/新宿タイニィアリス
1・12〜1・14
作・演出/本木香吏
出演/本木香吏、峰U子、萬知明(劇団ウエスト)、松岡里花、東口善計、桂都んぼ、広田あき、藤原新太郎(TEAM-DARKーBLUE)、藤原求実子、小林徹、ベッカム木下(激富)、濱崎右近、池下理都子、宮奥雅子