(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「女の果て」ポツドール

三浦大輔に替わって、溝口真希子がイニシアティブをとる女版ポツドールの2作目。前回は、惜しくも先ごろ退団してしまった安藤玉恵を中心に、撮影現場の控え室を舞台に、AV女優たちの人間模様をビビッドに描いて見せて、大きな成功を収めたが、さて今回は。
渋谷あたりにあるとおぼしきマンションの一室、ここはデリヘルの事務所。お客からの電話を待って、数人の女の子たちと、マネージャーの深山(白神美央)、ぱしりの田中(尾倉ケント)が待機している。電話で指名を受けては、お洒落をして指定の場所へいそいそと出かけていく女の子たち。
社長は、ホストあがりの中津川(米村亮太朗)だが、所帯持ちなのに、女の子たちのひとりアキナ(羽柴真希)と付き合っているのは公然の秘密。しかし他にも、エミリ(岩本エリ)やマミ(水野顕子)らとの関係も、来るものは拒まずで、次第に厄介なことに。そんな折、ミキと名乗る新人(安藤聖)が面接を受けにくるが、彼女にはとんでもない秘密があって。
前作「女のみち」でも激しく感じたことではあるが、生活感のある人間模様を描かせたら、本尊の三浦よりもこの溝口真希子の方が上ということを再認識する前半。女の子たちのキャラクターが、リアルというか等身大というか、本当にいそうな子ばかりだし、彼女たちの交わす会話がえらくリアルだ。大した事件はおきないのだが、彼女たちのときに仲良く、ときに摩擦を起こすやりとりは、観ていて実に面白い。
そして後半、社長のいない時を狙ったかのように、若い新人がやってきて、田中の研修を受けるくだりが、本作のハイライト。わたしは、途中から事の次第が判ってきて、笑いを堪えるのに苦労した。このシーンが盛り上がりのせいか、そのあとにやってくる終盤の叙情(白神が実にいい味を出している)がやや後退した感じすらする。
猥雑で濃やかな面白さは、女性たちの本音をしっかり煮詰めた本づくりに基づくものだが、岩本えりや水野顕子も、それをいい感じのテンションで演じて、盛り上げている。アフタートークでは、もう打ち止めにしたいという弱音も作・演出から飛び出したらしい女版であるが、そんなことを言わずに、パート3、パート4と末永く繋げていってもらいたいシリーズである。(100分)

■データ
幕が降り、ひと呼吸おいてから拍手で沸いた初日ソワレ/赤坂RED/THEATER
12・5〜12・9
脚本・演出 溝口真希子
出演/米村亮太朗、白神美央、羽柴真希(ペテカン)、水野顕子(アーノルド)、岩本えり(乞局)、安藤聖、玄覺悠子、尾倉ケント(アイサツ)
照明/伊藤孝(ART CORE design) 音響/中村嘉宏 舞台監督/清沢伸也・谷澤拓巳 舞台美術/田中敏恵 映像・宣伝美術/冨田中理(selfimege produkuts) 小道具/大橋路代(パワープラトン) 衣装/金子千尋 演出助手/富田恭史(jorro) 尾倉ケント(アイサツ) AD/鷲尾英彰