(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「マイルドにしぬ」演劇ユニットプロペラ犬旗揚げ公演

客演も、新感線、阿佐ヶ谷スパイダース、PPPPと来れば、これで芝居好きでなかったら嘘でしょう、という感じの水野美紀だけれど、いよいよ自身のユニットを脚本家楠野一郎とのチームで立ち上げ、スタートさせた。小劇場、お笑い、二人芝居を掲げるユニットの最初のゲスト・パートナーはパルコ劇場「開放弦」で共演した河原雅彦、演出に入江雅人を招いての公演である。
プロローグとエピローグを含めると、全部で6話からなるオムニバス。全編が数珠繋ぎになっているわけではないが、プロローグが次のエピソードの入れ子になっていたり、さらにはそれがエピローグへ奇妙な繋がり方をしたりする。一方、エピローグは、大物女優とマネージャーのエピソードの世界にリンクするなど、見様によっては凝った構成になっていて、不思議な一体感がある。
ホラーの要素があちこちに出てくるのは、やや意外に思えたが、ユニット名になっているプロペラ犬のエピソードを、登場人物としての水野が膨らませ、それが終盤へと繋がっていくあたりがいい。それともうひとつ、ほとんどの物語に、演劇の世界と通底するものがあって、演劇LOVEな思いがそこはかとなく伝わってくるのも嬉しい。
個人的に好きなのが、元劇団関係のサラリーマンが通りがかりに出会った変な女に芝居の稽古をつけていくエピソード。反対に、水野がピンクのセクシーな衣装で登場するその直後のエピソードは、サービス精神のあらわれだとしても、もう少し練り上げてほしい気がする。
客演の河原は、相方としては鉄板過ぎて面白味がないかと思いきや、チャーミングでファニーな水野の魅力を上手く引き出していて○。早くも来年の次回公演が決まったというニュースも嬉しいですね。美術で、最近元気な小指値が参加していて、新鮮な舞台装置(まるで小指値の舞台みたい!)を作り上げていることも書いておきたい。※12月2日まで。その後、大阪、川崎での公演予定あり。

■データ
客入れにThe Pipettesのアルバムをかけっぱなしにしていたマチネ/赤坂RED/THEATER
11・27〜12・2(東京公演)
作/楠野一郎 演出/入江雅人 
出演/水野美紀河原雅彦
美術・映像制作/小指値