(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「マシュマロ ホイップ パンク ロック」MCR

今回の公演は二本立てになっていて、こちらはそのもう一編。独立した一公演の扱いだが、「慈善MUST BE DIE」とまったく同じ舞台装置を使っての上演である。
ある病院の診察室。病院を訪れた男の訴えは、最近不思議な感覚に襲われるというものだった。突然やってくるそれは、どうやら性的な快感に似ているという。しかし医師は、そんなものに原因はないと取り合わず、ショックな事実を患者に告げる。検査の結果、あなたは癌で、余命もあと僅かだというのだ。
彼を襲う不思議な感覚は、やがてある女性と何かが繋がっているからだと判る。しかし、その何かは判らない。感覚だけが、電波のように伝わってくるようだ。レストランでの偶然の接近遭遇で、ふたりは互いにそれを意識するようになり、それぞれ恋人との関係に微妙な波風が立ち始める。
ありえないシチュエーションのセックス・コメディと思いきや、下世話な話がいつの間にかシリアスなテーマへとシフトしていく。真の優しさとは、友情とは、そして愛とは何か。そんな重たいテーマが、なんとも自然に浮上してくる面白さがある。
突然の癌宣告を受けながらも、男はなぜかそれを恋人に伝えられない。結婚の報告にやってきた弟にもダメ。それは相手を思いやるあまりのことなのだが、なぜか昔からの親友にはあっさりと告白できたりして。死の間際にある主人公の前で、恋人役の高橋優子が号泣する場面は、じわりと感動をおぼえました。
彼女ばかりでなくコメディエンヌたちが達者で、溌剌といいお仕事をしている感じ。ボケとつっこみのおふたりもいい味出してたけれど、所属のあひるなんちゃらでのクールな雰囲気をそのまま引き継いだ役柄の黒岩三佳が最高でした。
これまた難しい筈の幕切れをあっさりと決めてみせるのに感心。軽妙さの中に、深い味わいもたっぷり。面白いですね、MCR。贔屓します。(90分)※14日まで。

■データ
二作を較べるとこちらが一枚上手かのソワレ/中野ザ・ポケット
10・3〜10・14
作・演出/ドリル
出演/おがわじゅんや、江見昭嘉、福井喜朗、渡辺裕樹、小野紀亮、櫻井智也、黒岩三佳(あひるなんちゃら)、三瓶大介(ククルカン)、高橋優子、異儀田夏葉、生見司織(本田ライダーズ)篠本美帆(チーム下剋上)
舞台監督/金安凌平 舞台美術/袴田長武(ハカマ団) 照明/久保田つばさ(M Light)
音響/平井隆史(末広寿司) 宣伝美術・映像・撮影/メリケンサック 音楽/木村世志雄