(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「彼のことを知る旅に出る」ペテカン

ペテカンの芝居は過去に2回観ていて、最初はコント集、二度目は昔ながらの下宿屋を舞台にした人情喜劇風のドラマだった。前者を洗練とすれば、後者は土臭いもので、彼らの面白さはどちらかといえば前者にあるように思っているわたし。新作は、そのちょうど中間を往くような作品かもしれない。
同棲していた恋人(宮原将護)がこの世を去って1年、ひとり残された彼女(四條久美子)はいまだに傷心を抱え、前に進むことができない。そんな彼女が思い立ったのは、生前の彼という人物を改めて思い起そうとする試み。かくして、彼とつきあいのあった人々をひとりひとり訪ねていく彼女の旅が始まる。
高みにいる彼(死亡)と地上の彼女。その間には、天国への階段よろしく、ジグザグの段が作られているトップスの舞台だ。巡礼形式とでもいったらいいのだろうか、問わず語りに近いインタビュー形式で、いくつものエピソードが明らかにされ、ジグソーパズルが出来上がっていくように、生前の彼の姿が浮かび上がってくる。
ひとつひとつのエピソードの色づけが明確なのと、コラージュ仕立てのテンポの良さもあって、すんなりと楽しめる仕上がりになっている。ただ、個人的には、甘口のセンチメンタリズムには付き合いきれないところもあって、善人ばかりが登場する物足りなさや、天使と悪魔を出す意味合いが希薄なあたりが、いまひとつ。
特筆すべきは音楽の使いかたで、これが抜群に上手い。ウクレレ片手に、素朴だけど味わいのあるテーマ曲を繰り返し歌う佐藤みえこの弾き語りが、ほほんとした叙情を漂わせている。この歌の効果は、大きいと思う。(120分)※30日まで。

■データ
客席のあちこちからすすり泣きが聞こえてきたソワレ/新宿シアタートップス
9・20〜9・30
脚本・演出/本田誠
出演/宮原将護、四條久美子、椿鮒子WAHAHA本舗)、佐藤貴史サモ・アリナンズ)、帯金ゆかり(北京蝶々)、大治幸雄、斎田吾朗、濱田龍司、堀正哉、本田誠人、羽柴真希、長峰稔枝、佐藤みえこ、斉藤めぐみ、谷部聖子、成田沙織、寒河江有似、川原澄人(劇団ガッツ)、濱崎けい子(二人の会)、河内喜一朗(Studio Life