(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「遊び半分」中野成樹+フランケンズ

実は、ちょっと前からこの横浜を拠点に活動しているカンパニーを無性に観てみたいな、という気持ちが高まってきていたところ、向こうから赤坂にやってきてくれた感じで。2003年旗揚げで(前身のフランケンシュタイナーは1998年スタート)、翻訳劇ばかりをとりあげるという、独自のスタンスが大きな特徴だ。
田舎町の小さな呑み屋に、ふらりと現れたハンサムな青年クリスティ・マホーン(村上聡一)。遠くの町からやってきた彼は、自分の手で父親を殺した話をかっこよく披露し、村の女たちを魅了する。呑み屋の娘ペギーン(石橋志保)も、そのひとりで、ぱっとしない婚約者のショーン(松崎史也)そっちのけで、彼に熱をあげる。しかし、間もなく、クリスティの父親を名乗る男(ゴウタケヒロ)が彼を探しに現れて。
主宰が誤意訳と呼んでいる日本語への移し変え作業では、どの程度原作のテイストを伝えているのだろうか。登場人物たちが、相手の名前をことさら口にするあたり、創作を大胆に加えた翻案というよりは、律儀な翻訳に近い気もする。いや、そのあたりは、まったく想像の域を出ないのだけれども、ストレートな翻訳であればあるほど、われわれにはそのドラマが新鮮に映ることは間違いない。
本作も、国も時代背景も、今の日本とまったく異なる原作が却って新鮮だが、そこに描かれる男女の姿が、まったく違和感なく呑みこめるあたりに、誤意訳の威力を見せ付けられた気がするが、どうか?
それと、装置の凝り方(主宰自らが、観にくい、といってたのが笑える)や、衣装をはじめとするカラフルな色使い、使っている音楽、場の繋ぎなどの演出など、その料理法がことごとくお洒落なのにも、惚れ惚れさせられた。原作と本作を隔てる100年がまるで嘘のような新鮮な舞台だ。(100分)

■データ
文楽を観た国立劇場から赤坂までテクテク歩いたマチネ/赤坂RED/THEATER
9・20〜9・24
原作/J.M シング「西の国のプレイボーイ」 誤意訳・演出/中野成樹
出演/村上聡一、福田毅、野島真理、石橋志保、ゴウタケヒロ(POOL-5)、松崎史也(エレキ隊)、藤達成、竹田英司、大澤夏美、斎藤淳子
舞台美術/大平勝弘+細川浩伸(急な坂アトリエ) 照明/大迫浩二 音響/竹下亮(OFFICE MY ON) 舞台監督/山口英峰 宣伝美術/青木正(Thomas Alex