(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「アインシュタイン・ショック」劇団ジャブジャブサーキット第46回公演

1984年、脚本、演出のはせひろいちを中心に、岐阜大学OBによって結成され、89年から現在の劇団名を名乗るようになったジャブジャブサーキット。公演は名古屋と東京が多く、主宰のはせひろいちは、「サイコの晩餐」が第49回、「歪みたがる隊列」が第51回岸田國士戯曲賞にそれぞれ最終ノミネートされた実力派である。
大正年間に、講演のためにひと月半という長い期間、日本に滞在したことがあるアインシュタイン相対性理論によるノーベル物理学賞受賞の報せは、日本へ向かう船上だったといわれる。「アインシュタイン・ショック」は、彼の来日で当時の日本のインテリ層が狂騒するさまを背景に、アインシュタンを迎えることになった京都大学の舞台裏と彼をめぐるエピソードを描いている。
一方、それと並行し、ときにシンクロしながら、アインシュタインについて学んでいる教室の物語が進行する。先生の話に耳を傾ける3人の生徒たちは、おそらく小学生。授業は進み、やがて最後のときがやってきて。
後にナチスに祖国を追われ、アメリカへと移住することとなる、当時43歳だったアインシュタインと、その彼を迎える当時の日本の学界の様子が、非常に丁寧に、判り易く語られていく。寺田寅彦を演じる小関道代をはじめとして個性派揃い。実在の人物たちが行き交うエピソードは、史実を辿る面白さがあって、観ていて心地よい。
しかし、やがてアインシュタインを歴史の流れが呑みこみ、彼の理論がある歴史的な事件へと連なり、悲劇をもたらす。そこに至って、アインシュタインの来日時のエピソードと、彼について学ぶ教室の風景が、鮮やかにリンクする。この瞬間が、なかなか感動的だ。(100分)

■データ
マルディグラでいっぷくした後の初日ソワレ/下北沢ザ・スズナリ
9・20〜9・24(東京公演)
草案/北村想 作・演出/はせひろいち
出演/栗木己義、小山広明、はしぐちしん(コンブリ団)、岡浩之、咲田とばこ、小関道代、中杉真弓、岩木淳子、荘加真美、江川由紀、千頭麻衣、鳥岡寿江、くまのてつこ、鈴木愛子、なかさこあきこ、蒲公仁(東京のみ・個人企画集団*ガマ発動期)